研究課題/領域番号 |
21H01998
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
桶葭 興資 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (50557577)
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研究分担者 |
本郷 研太 北陸先端科学技術大学院大学, 情報社会基盤研究センター, 准教授 (60405040)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 移流集積 / モデル / 配向 / 界面 / 水 / 微粒子 / ゲル / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
殆どの散逸構造は一過性の現象で最終的に均一状態となるため、材料化に向けたモデル設計や利用価値が示されていない。一方、本研究の散逸構造「界面分割現象」では、水の蒸発に伴って高分子集積体がサブミクロンスケールで構造秩序化し、高分子配向膜として析出し永続的に残る。さらに、分割される空間数は物理パラメータで制御可能であることが示唆されている。この現象をモデル化するため本研究では、高分子/水系の実験、および理論を検証している。以下に具体的内容、意義、およびその重要性を記す。 1. 実証モデルとして、水分散系高分子である多糖各種に加え、汎用的な水溶性合成高分子に対しても調査した。まず、自己集合性多糖の微粒子が水分散された系の移流集積界面分割現象を理解するため、試料の粘度特性評価や蒸発界面の時空間変化を通して、重要パラメータの抽出と流体力学的な無次元数を評価した。水溶性合成高分子では、適切な物理化学条件を調査し実証に結びつけた。 2. 理論モデルと実験系をつなぐ速度論的解釈を進め、理論式上、重要な物理パラメータを新しく定め、その経時変化をモニタリングする実験装置を自作構築した。引き続き、実験データと理論モデルを結びつける物理因子の検証を進める。 3. 本研究に関わる査読付学術論文2報を発表した。レビュー論文として、多糖の自己集合構造やマルチスケールの配向構造をまとめ、またオリジナル論文として、水分散系の界面分割法によって得た多糖膜がカチオンに対して異方応答を示すハイドロゲルに関してまとめた。これらの2報については表紙採択された。 上記の研究内容について、国際学会7件含む学会発表11件を通して活発に議論した。これらを基に本研究の多角的なアプローチが進んでおり、引き続き研究を遂行するにあたって重要なステップを踏んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主な研究業績として査読付学術雑誌2報を公表するに至った。内容は、高分子水分散系の重要例として多糖を主題に扱ったレビュー論文1報とオリジナル論文1報を含み、順調に進んでいると言える。今後より一層の注目度が高まる持続可能な社会に向けて、環境適応性をもつ多糖は先端材料としても期待される。また、国際学会7件含む学会発表11件を通して活発な議論を重ねた。今後の内容についても研究分担者とも定期的にディスカッションして内容を深化させている。本年度は、オンライン形式による学会開催が続く中、研究者間コミュニケーションを通して、これまでの進捗の重要性を示した。
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今後の研究の推進方策 |
1-2年度目に得られた実験系から抽出した物理化学条件と理論系からのアプローチをもとに、3年度目以降も精度・確度の高いモデルを設計する。実験系では、移流集積のプロセスに着目して、その特異的析出を引き起こす物理パラメータに迫る。また、この散逸現象が材料化に有用であることを示すためにも、新しいソフトマテリアルの作製手法を探求する。同時に、分担研究者らと理論的アプローチを進め、時空間変化に係る物理パラメータに迫る。また、既往現象論の研究との違いを明確に示し続けるためにも、汎用的な高分子水分散系に対して実証し、系統的に評価する。これらの研究内容は随時、国内外の学会発表、および査読付論文発表を通して研究内容の発信を進める予定である。
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