研究実績の概要 |
今年度(1年目)は、フェナントロ[2,1-b:7,8-b]ジチオフェン (PDT-α) 分子中のコア部分の 2,7-位にアルキル基(CnH2n+1;n = 8, 10, 12, 13, 14)を導入した5種類に加えて、デシルチエニル基を有する2種類の誘導体の設計、合成および物理化学的性質について調査した。7種類の新規化合物に対して系統的な検討の結果、アルキル基の長さと側鎖の種類が誘導体の物理化学的性質に大きな影響を与えることがわかった。アルキル化されたPDT-α では、鎖長が長くなるにつれて溶解度が徐々に低下することがわかった。例えば、C8-PDT-α は、クロロホルムに対する溶解度が最も高かった(5.0 g/L)。また、5-デシルチエニル基で置換したPDT-α は、クロロホルムとトルエンのいずれに対しても溶解度が低く、4-デシルチエニル基で置換したPDT-α は溶解度が最も高くなることが示された。さらに、デシルチエニル基で置換したPDT-α 誘導体の紫外可視吸収スペクトルでは、レッドシフトを示し、π 共役長が拡張していることが示された。本研究により、アルキル基やデシルチエニル基の側鎖により分子コアを修飾することは、その物理化学的性質を向上させる効率的な戦略であり、高性能な有機半導体の開発につながる可能性があることを明らかにできた。
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