研究課題/領域番号 |
21H02041
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松下 祥子 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (50342853)
|
研究分担者 |
松谷 晃宏 東京工業大学, オープンファシリティセンター, 主任技術専門員 (40397047)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 熱エネルギー変換 / ゼロカーボン / ゼロエミッション / 半導体 / 熱励起電荷 |
研究実績の概要 |
本研究「増感型熱利用発電における使用熱量測定と効率の定義」では、半導体増感型熱利用発電(Semiconductor-sensitized thermal cell, STC)の発電における使用熱量を測定し、その効率の定義を提唱することを目的とした。 しかしながら熱量変化を追跡するためには、それまでに作製した発電部直径6 mmのSTCでは消費電力が足りず、STCの大型化が必要であることが判明した。 現在最も学術研究が進んでいる、熱励起電荷生成層にGe半導体を用いているGe系STCは、n-Siウェハ上に堆積したGeを用いている(Energy & Fuels 2022, 36, 19, 11619-11626.)。つまり、STCの大型化のためには通常規格サイズ以上のn-Siウェハを必要とした。しかしながら、通常規格外のn-Siは、ウェハ1枚当たり100万円をこえる金額となる。そこで2022年度は、Ge粉体をペースト化し、基盤上に塗布することで大面積化し、半導体電極として使用できないかを検討した。 Geのペースト化にあたっては既存のリチウムイオン電池電極作製の知見を取り入れ、逆電流を防ぐためにペースト材料の配合比や塗布方法などを検討した結果、最終的に発電可能なGeペーストを作製することができ、2023年3月に行われた応用物理学会にて報告した。 また、ペースト化とは別のGe電極作製のアプローチとして、スパッタなどのトップダウン法にてフレキシブル基板上へのGe電極作製も試み、水プラズマによるポリイミド/Ge間の接着性向上を確認し、学術論文1報、学会発表2報を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱量測定のために大型化が必要となり、2022年度はペースト電極のほか封止材などの検討も行っていた。しかしながら、大学内から「封止材の検討は学術ではない」「現在使用されている電解質は高分子をマトリックスとしているのだから、無機材料分野で研究をするべきではない」などの指摘を受け、STCそのものの研究の進展に大きな支障をきたした。 これらのことから、2022年度は研究拠点を東京工業大学 大岡山キャンパスからすずかけキャンパスへと移し、講座制の研究室から独立の研究室へと変わり、非学術の部分を担うためのスタートアップを立ち上げた。移動にもスタートアップ立ち上げにも多くの時間・労力を必要としたが、最終的に半導体電極のペースト化に成功し、水プラズマを利用したフレキシブルGe電極の作製にも成功したことから、おおむね順調に進展しているととらえている。
|
今後の研究の推進方策 |
Geペースト電極の作製はできたが、長期放電時のGeペースト電極の安定性・剥離強度向上・熱励起電荷の対極への移動効率向上・ラフネスによるイオン拡散のは促進の影響など、検討すべき項目は山積している。今後、まずは長期安定性を確認し、熱量変化測定まで進めていきたい。 また櫛形電極においても、長期放電時において、Ge電極が端から剥離することが確認されている。この剥離の原因が、電気毛管力なのか、Geが副反応を起こし酸化し膨張したためなのか、それとも熱応力の原因なのかなど、より詳細な検討を行い、最適なGeの厚み・構造など作製手法へとフィードバックしていきたい。
|