研究課題/領域番号 |
21H02087
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神谷 岳洋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40579439)
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研究分担者 |
山上 睦 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 副主任研究員 (60715499)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カスパリー線 / アポプラスト |
研究実績の概要 |
環境に応答したアポプラスト障壁形成の分子機構:前年度、シロイヌナズナの根において、低カリウム条件下でカスパリー線、アポプラスト障壁の形成が早まることを見出した。本年度は、その分子機構と生理的意義の検証を進めた。低カリウム条件で、カスパリー線形成のマスターレギュレーターであるMYB36の遺伝子発現が根端側で観察されること、また、NO蛍光色素を用いた解析、および、NO合成阻害剤とNO合成変異株の解析により、低カリウム条件で、根端のNOの量が減少すること、NOが少なくなると根端側でカスパリー線およびアポプラスト障壁の形成が起こることを明らかにした。さらに、その生理的意義を明らかにするために、NO合成変異株を低カリウム条件で栽培したところ、根の生育が阻害されたり、地上部のカリウム濃度が低くなることが観察された。以上の結果より、低カリウム条件では、根端近くまでアポプラスト障壁が形成され、根からカリウムが漏れ出るのを防ぎ、地上部へ効率よくカリウムを輸送する機構があることが示された。以上の結果を論文にする予定である。 地上部のアポプラスト障壁形成機構の解明と生理的意義の検証:シロイヌナズナにおいてカスパリー線形成に関与しているSGN3のホモログOsSGN3に着目し、CRISPR系統を作成した。当初は、ホモ系統を確立しようとしたが、雄性不稔であることが判明し、ヘテロ系統を維持することとした。実験をホモ系統を用いて行うため、ホモを選別するためのDNAマーカーを作成した。 キュウリを用いた解析も進めた。カスパリー線形成のマスターレギュレーターであるMYB36のキュウリホモログ遺伝子(CsMYB36)の破壊株はブルームレスになることが報告されている。本研究では、この遺伝子について解析を進め、破壊株ではカスパリー線は正常に形成されること、また、シロイヌナズナMYB36では見られない現象として、地上部でも発現していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
低カリウムによるカスパリー線形成機構について論文執筆に十分なデータが得られたこと、OsSGN3およびCsMYB36については、シロイヌナズナのMYB36とは異なり、根だけではなく地上部で発現していたり、地上部で表現型が観察され、カスパリー線形成遺伝子の新たな機能を見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
地上部におけるカスパリー線形成遺伝子の機能解析に焦点を当て進めていく。
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