腹部大動脈瘤予防法確立にむけた栄養学的基盤研究

2022 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 21H02147
• 配分区分: 補助金
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 財満 信宏 近畿大学, 農学部, 教授 (40455572)
• 研究分担者: 佐々木 健 浜松医科大学, 医学部, 技術専門員 (20397433) ; 田中 宏樹 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (50456563)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2025-03-31
• キーワード: 腹部大動脈瘤

研究実績の概要

本研究は腹部大動脈瘤の進展や破裂に至る病理学的機序の理解と、病態の進展や破裂を予防するための方法を確立することを目的としたものである。
病理学的機序の解析：これまでの本研究の成果により、腹部大動脈瘤発症、初期に変動する因子が段階的に変化する可能性を見出した（Biology 2021)。この解析は病理学的解析に基づくものであり、本年度は力学的変性が観察される時期の探索を中心に行った。この結果、大動脈の脆弱化が観察される時期が明らかになった。現在は、大動脈脆弱化を誘導する因子を探索している（未発表）。
進展・破裂予防法：これまでの本研究で腹部大動脈瘤の進展を抑制される可能性が報告されているエイコサペンタエン酸（EPA）とM2マクロファージの関係について報告した(Food & Funct. 2021、J. Lipid Res. 2022)。本年度は、EPAの効果の有無を決定する機序を推測するため、前年度とは異なる条件下におけるEPAの体内分布を解析した（論文準備中）。また、腹部大動脈瘤進展を抑制しうる機能性成分としてβカリオフィレン（Biomedicine & Pharmacotherapy 2022）やトリカプリン（Biomedicine & Pharmacotherapy 2023)を見出した。その他、女性に発症した腹部大動脈瘤を予防しうる成分としてのイソフラボンの研究を行った（J. Oleo Sci. 2022)。また、日本人腹部大動脈瘤患者の食事調査を行い、患者で観察される食事傾向を報告した（J. Oleo Sci. 2023)。

現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

基礎研究の成果として論文を4報、学会発表７件（うち招待講演２，国際学会２）発表したことに加え、発見した成果の社会実装化の可能性を見出した。さらに、昨年度報告した研究成果を受け、新たな国際共同研究チームを発足させることになったため、当初の計画以上に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

当初予定していた計画を遂行するほか、本研究で見いだされた腹部大動脈瘤予防・治療剤効果の作用機序を明らかにする研究を発展させていきたい。

研究成果

• [国際共同研究] prince of songkla university(タイ)
  • 国名: タイ
  • 外国機関名: prince of songkla university
• [雑誌論文] Tricaprin can prevent the development of AAA by attenuating aortic degeneration. (2023)
  • 著者名/発表者名: Kugo, H., Sugiura, Y., Fujishima, R., Jo, Shintou., Mishima, H., Sugamoto, E., Tanaka, H., Yamaguchi, S., Ikeda, Y., Hirano, K., Moriyama, T., Zaima, N
  • 雑誌名: Biomedicine & Pharmacotherapy. 巻: 160 ページ: 114299
  • DOI: 10.1016/j.biopha.2023.114299
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Survey of food intake in patients with abdominal aortic aneurysm. (2023)
  • 著者名/発表者名: Kugo, H., Yata, T., Kanai, R., Naruse, E., Inuzuka, K., Tanaka, H., Yanagimoto, K., Moriyama, T., Unno, N., Korigima, M., Zaima, N
  • 雑誌名: J. Oleo Sci. 巻: 72 ページ: 211-218
  • DOI: 10.5650/jos.ess22322
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Inhaled volatile β-caryophyllene is incorporated into the aortic wall and attenuates nicotine-induced aorta degeneration via a CB2 receptor-dependent pathway. (2022)
  • 著者名/発表者名: Kishi, C., Higashihara, M., Takemoto, Y., Kamei, M., Yoshioka, Y., Matsumura, S., Yamada, K., Kobayashi, T., Matahira, Y., Moriyama, T., Zaima, N
  • 雑誌名: Biomedicine & Pharmacotherapy. 巻: 153 ページ: 113423
  • DOI: 10.1016/j.biopha.2022.113423
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Administration of isoflavone attenuates ovariectomy-induced degeneration of aortic wall. (2022)
  • 著者名/発表者名: Miyamoto, K., Hasuike, S., Kugo, H., Sukketsiri, W., Moriyama, T., Zaima, N
  • 雑誌名: J. Oleo Sci. 巻: 71 ページ: 889-896
  • DOI: 10.5650/jos.ess22043
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [学会発表] 香りとしてのβ-カリオフィレンはニコチン誘導性血管損傷を抑制する」 (2022)
  • 著者名/発表者名: 東原真代、岸千尋、竹本有希、亀井萌花、吉岡百合、松村晋一、山田和哉、小林崇典、又平芳春、森山達哉、財満信宏
  • 学会等名: 第76回日本栄養・食糧学会大会
• [学会発表] 循環不全が生じた腹部大動脈瘤に対する魚油の進展抑制効果とEPA分布の可視化 (2022)
  • 著者名/発表者名: 久後裕菜、藤嶋玲奈、榎元廣文、森山達哉、財満信宏
  • 学会等名: 第76回日本栄養・食糧学会大会
• [学会発表] 腹部大動脈壁におけるエイコサペンタエン酸の間葉系幹細胞への優先的な取り込みとその病理学的意味 (2022)
  • 著者名/発表者名: 東原真代、久後裕菜、榎元廣文、森山達哉、財満信宏
  • 学会等名: 中性脂肪学会 第5回学術集会
• [学会発表] 香りとしてのβ-カリオフィレンはニコチン誘導性血管損傷を抑制する (2022)
  • 著者名/発表者名: 東原真代、岸千尋、竹本有希、亀井萌花、吉岡百合、松村晋一、山田和哉、小林崇典、又平芳春、森山達哉、財満信宏
  • 学会等名: 日本食品科学工学会 第5回関西支部大会
• [学会発表] Similar distribution of eicosapentaenoic acid and mesenchymal stem cells in the abdominal aortic aneurysm walls (2022)
  • 著者名/発表者名: Mayo Higashihara, Hirona Kugo, Hirofumi Enomoto, Tatsuya Moriyama, Nobuhiro Zaima.
  • 学会等名: 22nd IUNS-ICN International Congress of Nutrition
  • 国際学会
• [学会発表] 経口摂取したエイコサペンタエン酸（EPA）はどこにいる？－局在解析で示されたEPAの生理機能発揮機序の進展開－ (2022)
  • 著者名/発表者名: 財満信宏
  • 学会等名: 中性脂肪学会第5回学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] Visualization of functional food factors by matrix-assisted laser desorption/ionization imaging mass spectrometry (2022)
  • 著者名/発表者名: Nobuhiro ZAIMA
  • 学会等名: 22nd International Congress of Nutrition
  • 国際学会 / 招待講演
• [備考] 近畿大学農学部応用細胞生物学研究室ホームページ
  • URL: https://www.nara.kindai.ac.jp/laboratory/cell-biology/aaa.html