研究課題/領域番号 |
21H02173
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
豊田 正範 香川大学, 農学部, 教授 (30284350)
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研究分担者 |
当真 要 北海道大学, 農学研究院, 教授 (10514359)
諸隈 正裕 香川大学, 農学部, 准教授 (50284352)
水田 圭祐 香川大学, 農学部, 助教 (50910056)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水稲 / 直播 / 輪作体系 / 生産性 / 温室効果ガス |
研究実績の概要 |
本研究は直播と地下点滴潅がい栽培による水稲-コムギの輪作体系における生産性と温室効果ガス排出量削減による環境負荷低減効果の検証が目的である.2021年度に引き続き,2022年度は香川大学農学部内の畑地と水田の両試験圃場にて,水稲-コムギ輪作の栽培試験を実施した. 水稲栽培では,畑地圃場の点滴潅がい区に点滴チューブを地表面からの深さ20cmに埋設した.6月10日に種子間隔3cmのシードテープを条間30cmで1畝につき6条を播種した.水田の湛水栽培区には6月16日に株間15cm,条間30cmで移植した.点滴潅がい区の日々の潅水量は推定蒸発散量と作物係数により決定し,降雨の際は適宜潅水を控えた.湛水栽培区は代かきから成熟期の収穫直前まで常時湛水状態とした.生育期間中には地上部乾物重,葉面積,積算吸収日射量,葉齢,茎数,SPAD値などの調査を定期的に実施した.点滴潅がい区の全乾物重,全籾数,穂数は湛水栽培区を上回っていたが,登熟歩合,玄米千粒重,収穫指数は湛水栽培区より低かったため,結果的に収量は湛水栽培区と同水準となった. 生育期間中は毎週1回,圃場から排出される二酸化炭素(CO2),亜酸化窒素(N2O),メタン(CH4)フラックスをチャンバー法により測定した. 水稲の収穫後にコムギ品種さぬきの夢の栽培を実施した.畑地圃場と水田の前作跡に裁断した前作の稲わらを散布して耕運機で浅く耕起し,種子間隔2.5cmのシードテープを条間25cmで播種した.播種日は畑地圃場が11月15日,水田が11月17日である.畑地圃場では播種作業は順調で,発芽,苗立は良好であった.一方,水田では播種時に土壌が過湿状態で発芽,苗立も不良であった.このため,水田では比較的発芽が揃っている一部区画のみを調査対象としている.成熟と収穫時調査は5月下旬の見込みであり,その後,できるだけ速やかに水稲栽培を開始する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
香川大学農学部内の畑地と水田の両試験圃場にて,水稲-コムギ輪作の栽培試験を実施した.2022年度は2年目であるが,予定の本試験の初年度にあたる.2021年度と同様に,予定していた調査はおおむね実施することができた. 水稲栽培では,畑地圃場の点滴潅がい区の点滴チューブは令和3年度に埋設済みであり,2021年度より5日早く播種できた.令和3年度に確認された直播区の土壌病虫害による発芽,苗立ちの不良に関して,播種前にクロルピクリンによる土壌消毒を実施し,昨年度よりも均一な苗立ちが確保できた.施肥と潅がいは特に問題なく計画どおりに実施できた.生育期間中における地上部乾物重,葉面積,積算吸収日射量,葉齢,茎数,SPAD値などの調査,および収量調査は計画どおり実施できた.生育期間中は毎週1回,圃場から排出される二酸化炭素(CO2),亜酸化窒素(N2O),メタン(CH4)フラックスをチャンバー法により測定した.令和3年度と同様に,湛水栽培区のCH4の経時変化は比較的高い直線性を有しているのに対して,点滴潅がい区のCH4 と両区のN2Oは変動が認められた.この変動に対する処理方法を検討し,適切にフラックス計算ができるフローチャートを確立した.秋のコムギ播種に関しては,2021年度と同様に畑地圃場の播種作業は順調で,発芽,苗立は良好であったが,水田では播種時に排水が十分ではなく,土壌が過湿状態で播種作業も困難であり,発芽,苗立も不良であった.このため,水田では比較的発芽が揃っている一部区画のみを調査対象としている.成長と生育の調査や温室効果ガスの採取・分析は予定どおり進めており,成熟と収穫時調査は5月下旬の見込みである.その後,できるだけ速やかに水稲栽培を開始する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
予備試験としての位置づけであった2021年度の栽培試験および本試験の初年度である2022年度がおおむね順調であり,2023年度も特に計画の変更や修正を要することなく2年目の本試験を実施する予定である.水稲は畑地圃場の点滴潅がい区と水田の湛水栽培区で6月上旬~10月にかけて栽培試験を行い,点滴潅がい区ではさらに硝化抑制剤の処理区を設ける.調査項目は2021年度と同様に地上部乾物重,葉面積,積算吸収日射量,葉齢,茎数,SPAD値などを定期的に調査し,光合成関連の生理学的調査も実施する.収量および収量構成要素,玄米(玄麦)の食味・品質・成分分析,栽培環境(気象,蒸発散量,土壌水分・酸素,酸化還元電位,土壌アンモニア態窒素・硝酸態窒素含有量,土壌の全窒素・炭素含有量),温室効果ガス(毎週1回,温室効果ガスの採取・分析)を計画どおり実施する予定である.コムギは畑地圃場と水田の水稲栽培跡に11月上旬~5月下旬にかけて栽培試験を行う.いずれも天水栽培とし,調査項目は水稲の栽培試験とほぼ同様に実施する. 2022年度では直播点滴かんがい区の播種前に土壌消毒を実施したので,2021年度よりも苗立ちは良好であった.しかし,点滴かんがい区では湛水栽培区よりカメムシといもち病が多発したので,その原因の解明と予防策について検討を予定している.チャンバー法により測定した温室効果ガスの濃度の経時変化が直線性に劣る場合の処理方法についてはほぼ確立した.水稲作後の水田の排水不良によるコムギ播種作業の困難さや苗立ち不良などについては引き続き対策を講じる必要がある.
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