研究課題
内在性ウイルス配列(EVE)による抗ウイルス機構が、蚊の生存や繁殖に対して、どのような利点があるのかを検討するため、本年度は、CFAV自然感染蚊系統(CFAV-EVE非保有)とCFAV非感染・CFAV-EVE保有系統を掛け合わせることで、遺伝的背景を均一にしたCFAV自然感・CFAV-EVE保有もしくは非保有系統の作製を行った。CFAV-EVEの保有と非保有系統の作製においては、それぞれのホモ接合体を持つ個体を生存したまま選別する必要がある。そのため、蚊の脚を用いた簡便かつ迅速なジェノタイピング法を構築した。この方法を用いることで、CFAV自然感・CFAV-EVE保有(+/+)もしくは非保有(-/-)系統を作製することが可能となった。さらに上記2つのネッタイシマカ系統におけるCFAVの感染率は、その親世代と同様に100%に近いことが観察された。またCFAV自然感染蚊個体の頭部、脚、中腸や卵巣といった器官においても、CFAV RNAが検出されていることから、当初の計画通りEVEが蚊の繁殖、特に産卵や孵化の段階に機能することを検証するために感染蚊個体のCFAV RNA量とともに産卵数と孵化率への影響の評価にも着手した。
2: おおむね順調に進展している
遺伝的背景を均一にしたCFAV自然感・CFAV-EVE保有(+/+)もしくは非保有(-/-)系統の作製に伴い、効率的なジェノタイピング法を構築し、目的の2つの系統も作製することができた。これらの2系統のネッタイシマカを用いて、蚊の繁殖にどのようにEVEが影響するのかを評価する実験にも着手している。また、自然界におけるCFAVとCFAV-EVEの相互作用を明らかにするための野生蚊採取や実験の打ち合わせも共同研究者と進めている。よって、おおむね順調に進展していると判断した。
本年度に構築した2つのCFAV自然感染・CFAV-EVE保有・非保有ネッタイシマカ系統を用いて、CFAV RNA量の比較や産卵数と孵化率への影響の評価を継続する。またsmall RNA解析を行うことで、CFAVとCFAV-EVEがpiRNA経路を介した相互作用を起こしているかを明らかにする。さらに野生のネッタイシマカにおけるCFAVの感染とCFAV-EVEの検出も行う。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Virology
巻: 591 ページ: 109982~109982
10.1016/j.virol.2024.109982
Royal Society Open Science
巻: 11 ページ: N/A
10.1098/rsos.231373