研究課題/領域番号 |
21H02233
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
門脇 浩明 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (30643548)
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研究分担者 |
西岡 正恵 (石原正恵) 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (90594367)
本庄 三恵 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30450208)
立木 佑弥 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (40741799)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 土壌微生物 / 真菌 / 細菌 / DNAメタバーコーディング |
研究実績の概要 |
本年度は次年度以降に実施する植物土壌フィードバック実験のための大規模な種子採集、およびシカ柵設置サイトと対照区の間の土壌サンプリングを行い微生物群集の構造を比較するための調査の二つを主な目標として進めてきた。結果として、いずれの目標も達成することができ、順調なプロジェクトのスタートを切ることができたと考えている。 2021年の8-11月にかけて芦生研究林において50樹種を超える樹木から合計10万以上の種子を採集し、2022年3月からガラス温室において滅菌した赤玉土で育成し、実験に用いる実生を十分な数を確保できる見込みである。当初の想定よりも多くの樹種の種子を採取できたことから、次年度の本実験では実験に用いる樹種を増やしより大規模な実生栽培実験ができるようになった。また、2021年9月には芦生研究林のシカ柵サイトにて土壌の採集を行い、乾燥させたサンプルから細菌・真菌DNA を抽出、PCRを終えて、シーケンスを行う段階にまできている。この分子実験は、分担者とともに生態研センターの共同利用制度を活用して、学生RA一名とともに進めた。本研究のキックオフシンポジウムとして「シカの脅威と次世代型森林再生のロードマップ研究集会」を2021年7月に企画、オンライン開催し233名の参加者とシカ食害の問題について議論を深めることができた。 また、芦生研究林の長期森林動態やシカ柵を用いた研究の学術論文2篇の原稿が完成し投稿準備段階にある。また、本研究にかかる1件の国際会議での招待講演やそのほかの学会発表を3件行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度の本実験に用いる種子から順調に実生を育成できていること、計画通り初年度の土壌微生物群集のサンプリングとDNA解析が進んでいること、これら二つの観点から本プロジェクトが順調に進んでいると考えることができる。研究分担者との連携がうまく機能したこと、実生の育成のための十分な良好なスペースを確保できたこと、RAの雇用もプロジェクトを進める上で大きな原動力になった。所属研究室において土壌微生物のDNA実験を行うための設備環境のセットアップを行い、DNA抽出からPCRまでを自力で行う環境を完成させることができたのも、研究の進捗そのものとして現れてこないが、大きな進展であった。さらに、本研究計画が基盤とする、芦生研究林の長期観測研究から特定の樹種の間(特にブナ、スギ、カエデ類やサワグルミなど)に植物土壌フィードバックが働くことが示唆されたため、今後の実験の方向性が明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、植物土壌フィードバックは働く可能性がある樹種をピックアップして実生を育成し、実生の成長に有益、あるいは有害であると考えられる樹種の足下から採取した土壌を接種する場合で実生の成長パターンを比較することで、樹種間の植物土壌フィードバックの方向性と強度を推定したい。その実験と並行して、土壌微生物群集の構造をDNAメタバーコーディング法によって調べ、土壌栄養成分と化学分析を行うことで、植物土壌フィードバックの発生機構を絞りこんでいきたいと考えられている。また、実生の成長データが得られれば理論生態学的なアプローチにより樹木群集の共存機構や遷移機構の分析が可能となる。実験的研究と理論研究の融合を強力に進めていくことが今後の方向性である。現時点では研究計画の変更は必要ないと考えている。またシカ柵が土壌微生物群集の組成に与える影響を解析した研究のDNAシーケンスを終えバイオインフォマティクスの解析を行なって、できるだけ早い論文化に取り組んでいく予定である。
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