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2021 年度 実績報告書

有用林木における遺伝子組換え・組織培養が不要な精密育種技術の確立

研究課題

研究課題/領域番号 21H02242
配分区分補助金
研究機関国立研究開発法人森林研究・整備機構

研究代表者

七里 吉彦  国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 森林バイオ研究センター, 主任研究員 等 (80461292)

研究分担者 岩崎 崇  鳥取大学, 農学部, 准教授 (30585584)
遠藤 圭太  国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (00754368)
小長谷 賢一  国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 森林バイオ研究センター, 主任研究員 等 (30582762)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードゲノム編集 / スギ / 直接導入 / 樹木 / in planta
研究実績の概要

我々はこれまでに新規膜透過性ペプチドである「ポリヒスチジン」を用いて、スギ培養細胞へゲノム編集タンパク質を一過的に導入し、狙った領域のDNA配列を改変することに成功している。この直接導入法を茎頂分裂組織に適用することで、遺伝子組換え・組織培養を介さずにゲノム編集個体を得る、「in planta直接ゲノム編集法」を確立することが本課題の目的である。本年度は(1)茎頂分裂組織へのタンパク質導入条件の検討、(2)改良型Cas9タンパク質合成系の構築、(3)標的遺伝子の単離、について実施した。
(1)について、材料としてスギ培養細胞から分化される「不定胚」を用いた。不定胚に水溶液を浸透させる条件検討を行った結果、培養期間を3日間に延長することで水溶液が不定胚全体に浸透することが明らかとなった。
(2)について、脱アミノ酵素を利用して標的とする塩基CをTに置換するTarget-AIDタンパク質の大腸菌での合成を試みた。合成したタンパク質は期待通り標的領域の塩基置換に寄与することがin vitro試験により明らかとなった。ただ、このタンパク質溶液中に混在するエンドトキシンにより細胞の成育に悪影響を与えていることが示唆された。そこで、大腸菌の株を変更し、タンパク質溶液中のエンドトキシン量を従来の1/1000に抑えることに成功した。現在この株を用いて試験で使用するゲノム編集タンパク質を合成している。
(3)について、カラマツから標的遺伝子を探索し、葉緑体合成に関与するマグネシウムキラターゼ(ChlI)遺伝子と点変異により除草剤耐性が付与されるアセト乳酸合成遺伝子(ALS)を単離した。ゲノムデータベースの情報より、カラマツにおいてChlIは複数コピー、ALSは1コピー存在することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度に計画した各小課題について、それぞれが計画どおりに進展していることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。

今後の研究の推進方策

今後は(1)茎頂分裂組織へのゲノム編集タンパク質導入条件の検討、(2)ゲノム編集効率を向上させる物理的・化学的処理の検討、(3)スギやカラマツのマイクロプロパゲーション方法の確立、(4)カラマツにおける組織培養系の構築、を計画している。
(1)について、昨年度に不定胚にて確立した条件に加えて減圧処理などの物理的処理を併用し、不定胚などにゲノム編集タンパク質を導入し、分化してきた芽のゲノム編集効率を調査する。
(2)について、これまでスギ培養細胞を用いた試験ではゲノム編集タンパク質溶液を導入することができていたが、茎頂分裂組織のゲノム編集には深い細胞層にまでゲノム編集タンパク質を到達させる必要がある。そこで、物理的・化学的処理の適用を試みる。具体的には減圧処理、マイクロニードルなどを用いた茎頂の致傷処理などを計画している。
(3)について、in planta直接ゲノム編集法の確立の際に問題となっているのが、実験に用いる若い茎頂を大量に得られないという点である。この問題を解決するため、組織培養技術により、スギ及びカラマツの茎頂を培養ビンにて大量に増殖する方法を確立する。具体的には固形培地に添加する植物ホルモンの最適化などを検討する。
(4)について、カラマツにおいてもスギと同様に培養細胞から不定胚を分化させ、直接導入法に供することを目的に、カラマツ未熟胚を初発とする培養細胞系を確立する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Direct protein delivery into intact plant cells using polyhistidine peptides2021

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Yoshino、Nanasato Yoshihiko、Omura Kousei、Endoh Keita、Kawano Tsuyoshi、Iwasaki Takashi
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 85 ページ: 1405~1414

    • DOI

      10.1093/bbb/zbab055

    • 査読あり
  • [雑誌論文] CRISPR/Cas9-mediated targeted mutagenesis in Japanese cedar (Cryptomeria japonica D. Don)2021

    • 著者名/発表者名
      Nanasato Yoshihiko、Mikami Masafumi、Futamura Norihiro、Endo Masaki、Nishiguchi Mitsuru、Ohmiya Yasunori、Konagaya Ken-ichi、Taniguchi Toru
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 ページ: 16186

    • DOI

      10.1038/s41598-021-95547-w

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 細胞膜透過ペプチドを利用した遺伝子組換えに依存しない植物ゲノム編集技術2022

    • 著者名/発表者名
      田中淑乃、七里吉彦、大村昂誠、河野 強、遠藤圭太、岩﨑 崇
    • 学会等名
      日本農芸化学会2022年度大会
  • [学会発表] スギのゲノム編集技術が切り開く森林の未来2022

    • 著者名/発表者名
      七里吉彦
    • 学会等名
      大阪都市再生部会第4回研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] A Non-Transgenic Plant Genome Editing Method Using Cell-Penetrating Peptides Polyhistidine Peptides.2021

    • 著者名/発表者名
      Y. Tanaka, Y. Nanasato, K. Omura, K. Endoh, T. Kawano and T. Iwasaki
    • 学会等名
      第58回ペプチド討論会
  • [学会発表] ゲノム編集を志向した植物細胞への酵素直接導入法の開発2021

    • 著者名/発表者名
      田中淑乃、七里吉彦、大村昂誠、河野 強、遠藤圭太、岩﨑 崇
    • 学会等名
      日本ゲノム編集学会第6回大会
  • [学会発表] 塩基編集技術による除草剤耐性スギ(Cryptomeria japonica D. Don)細胞系統の作出2021

    • 著者名/発表者名
      七里吉彦、小長谷賢一、上野真義、遠藤真咲、谷口亨
    • 学会等名
      第38回日本植物バイオテクノロジー学会
  • [図書] ひとりではじめる植物バイオテクノロジー入門 組織培養からゲノム編集まで2022

    • 著者名/発表者名
      田部井豊、七里吉彦、三柴啓一郎、安本周平
    • 総ページ数
      413
    • 出版者
      国際文献社
    • ISBN
      978-4-910603-03-2
  • [産業財産権] 細胞膜透過ペプチドを利用した遺伝子組換えに頼らない植物ゲノム編集技術2021

    • 発明者名
      岩﨑崇、大村昂誠、田中淑乃、七里吉彦
    • 権利者名
      鳥取大学、森林研究・整備機構
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2021/046845
    • 外国

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公開日: 2022-12-28  

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