研究課題/領域番号 |
21H02261
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
古海 誓一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 准教授 (30391220)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | セルロース / バイオマスリファイナリー / コレステリック液晶 / エラストマー / ひずみ / ゴム弾性 / 粘弾性 / 反射色 |
研究実績の概要 |
セルロースの誘導体であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、側鎖の水酸基をアシル化することで、サーモトロピック・コレステリック液晶を示す。側鎖をアシル化したHPC誘導体を昇温すると、周期長が増大することで、反射波長は長波長シフトする。さらに、炭素鎖が長いアシル基を側鎖に導入することによっても周期長が増大し、反射波長が長波長シフトする。これらの性質を利用し、適切な鎖長のアシル基をHPC側鎖に導入することで、任意の温度において、任意の波長の光を反射するコレステリック液晶を作製することが可能である。したがって、側鎖にアシル基を有するHPC誘導体は、環境低負荷なコレステリック液晶として多種多様なフォトニックデバイスへの応用が期待できる。一方で、これらのHPC誘導体の構造と粘弾性挙動の関係は未解明であった。 そこで、今年度では、側鎖の水酸基をアセチル化、プロピオニル化、またはブチリル化したHPC誘導体を合成し、コレステリック液晶の分子構造が粘弾性挙動に及ぼす影響について、レオメーターを使った検討を行った。まず、角周波数を0.1~100 rad/s の範囲におけるHPC誘導体の貯蔵弾性率(G')と損失弾性率(G”)を、厚み(d)を0.2~1.0 mmの範囲で変えて測定した。その結果、厚みdを薄くすることで、治具界面からのアンカリングの影響が強まり、HPC誘導体のコレステリック液晶が強くプレーナ配向することを見出した。さらに、0.1~100 rad/sの角周波数の範囲におけるG'とG”の値を、温度時間換算則に従って垂直・水平方向に移動させることで、マスターカーブを作成した。その結果、高角周波数側ではガラス転移に起因するG'とG”の交点が見られた。一方で、低角周波数側には、G'に特徴的な変曲点が現れ、コレステリック液晶における分子らせんの変化によるものと推察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、レオメーターを使った粘弾性特性に関する知見が得られ、順調に研究を進めることができた。さらに、派生的な研究成果も見出すことができ、それらの一部は技術的に優れていると判断して、3件の特許出願を行うことができた。今後、学会発表や特許出願だけでなく、学術論文の掲載を目指して研究を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度にレオメーターを使って発見したせん断によるセルロース誘導体のコレステリック液晶における分子らせんの変化に着目して、セルロース誘導体における特異な物性を発見できるよう研究に取り組む。このような物性評価と発見だけでなく、新しいセルロース誘導体の分子設計や合成にも注力して、将来的に本研究提案が幅広く発展できるよう研究を進める。
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