研究課題/領域番号 |
21H02262
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
黒田 克史 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90399379)
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研究分担者 |
半 智史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40627709)
上野 真義 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40414479)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 木部柔細胞 / スギ / 辺材 / 心材 / 移行材 / 網羅的遺伝子解析 / RNA / RNA-seq |
研究実績の概要 |
樹木の幹は中央部の心材と心材を取り囲み形成層で囲まれている辺材から構成されている。この辺材と心材を科学的に定義づけるものは木部の生きた細胞、すなわち木部柔細胞の存在である。成長がよい樹木は辺材の幅(生きた柔細胞が存在する範囲)が広くなる。一方で、心材(すべての柔細胞が死んでいる範囲)の割合が小さくなるため耐久性の面では不利となる。そのため、木部柔細胞による成長と耐久性のバランスの制御は樹木の長寿命の戦略として極めて重要である。重要な細胞であるにも関わらず立木内位置による木部柔細胞の挙動や機能は未解明である。その大きな理由は、樹木内部の様子を解析する実験が難しいことに加え、幹の放射方向の位置を表す統一された定義がないことである。そこで本研究では、幹放射方向の位置を決める新しい基準として遺伝子発現が変化する点を用いたステージで区分することを提案し、この基準に従い、立木内の木部柔細胞の分裂から細胞死までの一生を通しての機能変化(生活史)を解明することを目的とする。 1年目の本年度は、スギを材料に効率的に遺伝子発現解析を行うための試料採取の工夫とRNA抽出条件等の検討を行った。遺伝子発現パターンの解析は、新型シーケンサーを用いた網羅的発現解析(RNA-seq)を行う一般的な手法を用いるが、幹の2%程度しかない木部柔細胞で発現する遺伝子を解析するのは容易ではない。とくに本研究では放射方向をできるだけ細かく分割して解析する必要がある。試料の調製方法と抽出方法を検討した結果、本研究の目的に適した効率的な方法を確立することができた。この成果をもとに2年目以降の解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スギ幹の2%程度しかない木部柔細胞の遺伝子発現パターンの変化を幹放射方向にできるだけ細かく分割した微小な試料から解析するためには、微量なスギ木部材料から効率的にRNAを抽出することが重要である。さらに、細胞死が進行して生存細胞数が少ない辺材-心材移行部や心材からも解析可能なRNA量を抽出する必要がある。そのため、微小な木部材料からの効率的なRNA抽出は本研究の成否を決める重要な要素であるが、本年度の実験により本研究の目的に適したRNA抽出条件を設定することができた。そのことから、本課題は順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の5月に採取したスギ丸太を用い、放射方向に細かく分割した木部試料からRNAを抽出し、新型シーケンサーを用いた網羅的発現解析(RNA-seq)を行う。得られたデータから遺伝子発現パターンを解析しパターンが変化する木部放射位置を複数特定する。さらに、遺伝子発現パターンの変化が起きる部位での柔細胞の様子を明らかにするために、各位置における木部柔細胞の形態や成分分布を顕微鏡等により解析する。
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