研究課題/領域番号 |
21H02287
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
吉田 照豊 宮崎大学, 農学部, 教授 (20240294)
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研究分担者 |
野本 竜平 神戸市健康科学研究所, その他部局等, 副部長 (60642238)
鈴木 祥広 宮崎大学, 工学部, 教授 (90264366)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ブリ類 / 養殖 / 薬剤耐性 / Lactococcus garvieae / erm(B) / lsa(D) |
研究実績の概要 |
○養殖現場で流行しているレンサ球菌の最新流行株を調査した。2021年度に開発したPCR系でブリ、カンパチ、シマアジ、アジ等から分離した菌株の迅速診断及び薬剤感受性試験を行なった。さらに、ゲノム情報からMLSA解析を行なった。その結果、近年のブリ類養殖場にはII及びIII型血清型のレンサ球菌の拡大が明らかとなった。 ○薬剤感受性の動向としては、II型についてはほとんどの株がリンコマイシンに耐性化していたが、エリスロマイシンに耐性は一部のみであった。III型は全てがリンコマイシンに耐性化していたが、エリスロマイシン耐性菌は分離されなかった。I型はリンコマイシン耐性と感受性が分離された。エリスロマイシン耐性菌は確認されなかった。II型のエリスロマイシン耐性は、erm (B)を保有する伝達性プラスミド由来であった。また、I型およびIII型のリンコマイシン耐性機構は、lsa(D)のバリアントであった。 ○近年分離されているIII型血清型である新興レンサ球菌は、ゲノム解析の結果、大きく2遺伝子型の細菌集団が養殖場に拡大していることが判明した。II型に関しては均一な細菌集団であることが判明した。 ○III型のレンサ球菌は血清学的には均一であるが、莢膜の消失した株は I型、III型診断用抗血清にも凝集することが判明した。また、I、II及びIII型レンサ球菌ともに液体培地中で長期に生存し、コロニー形成能を有していた。特にI型に関しては海水中(15度)で3ヶ月間はコロニー形成能力を保持していることを示した。特に有機物がある場合は、長期に生残することも明らかになった。 ○I型のエリスロマイシン耐性をコードしているプラスミドは、III型のレンサ球菌にも試験管内で接合伝達することを明らかにした。近縁の菌株同士での薬剤耐性遺伝子をやりとりしている可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定している主な研究課題である、レンサ球菌の最新流行株の解析、レンサ球菌の薬剤耐性とレンサ球菌の生存性について検討した。その結果、それぞれについて研究成果を得ることができた。また疫学調査において、今まで知られていなかった新型レンサ球菌の発見とその流行及び複数県への拡散を確認した。さらには、異なる遺伝子型菌株の養殖場への拡散を明らかにした。II型菌株のエリスロマイシン耐性がRプラスミドにコードされており高頻度に伝達した。また。I型菌株のエリスロマイシン耐性がIII型にも接合伝達することを示した。これらの研究成果の一部を論文等で発表した(accepted)
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今後の研究の推進方策 |
1;養殖場の夏場の環境とレンサ球菌の発症状況について、現場の環境状況を調査する。特に溶存酸素量及び水温に着目して、レンサ球菌の発生状況との関連性を調査する。 2;新興レンサ球菌である血清型III型の病原性及びワクチン試験(治療試験)を共同研究で行う。特に、現場に対応できるようにI,II及びIII型を混合したワクチンの可能性を検討する。 3;I,II及びIII型レンサ球菌の血清学識別を凝集法だけでなく、ゲル内沈降反応も含めて解析する。 4;薬剤耐性因子を獲得したのち、どれだけの期間、その耐性を安定的に維持できるのかを調査する。特に、Rプラスミド由来のエリスロマイシン耐性の安定性がどのように異なるかを継代培養により調査する。 またプラスミドの全ゲノム情報を得ることで、プラスミドの起源及び系統を調査する。
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