研究課題/領域番号 |
21H02302
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中嶋 晋作 明治大学, 農学部, 専任准教授 (00569494)
|
研究分担者 |
新山 陽子 立命館大学, 食マネジメント学部, 教授 (10172610)
竹内 あい 立命館大学, 経済学部, 准教授 (10453979)
西村 直子 立命館大学, 食マネジメント学部, 教授 (30218200)
井上 信宏 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (40303440)
上原 三知 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (40412093)
武者 忠彦 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (70432177)
前川 淳 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (80737479)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | メカニズムデザイン / フューチャー・デザイン / 農地集積 / 実験経済学 / ワークショップ |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績の概要は、以下の通りである。 第1の研究実績は、複数の農地集積メカニズムの提示である。既存研究で提案されている区画交換アルゴリズムを参照しつつ、複数の農地集積のメカニズムを提示した。その際、新たな経済理論の潮流として注目されているマーケットデザインの手法(オークションとマッチング)を適用した。実装した農地集積のアルゴリズムはDA(deferred acceptance)アルゴリズムであり、シミュレーション分析の結果、農地集団化率では既存の農地集積手法に劣るものの、安定性、効率性、公平性の基準から、提案したDAアルゴリズムが最も優れた農地集積の方式であることを明らかにした。 第2の研究実績は、農村現場におけるフューチャー・デザイン手法の「構造化」である。フューチャー・デザインに関しては、多くの実践事例が報告されているが、農業・農村の領域で適用した事例は見当たらない。そこで、農村現場にフューチャー・デザインを上手く適用できるように、フューチャー・デザイン討議手法を「構造化」し、討議の際に提供される情報が意思決定に及ぼす影響を検討した。対象地域は、長野県佐久穂町と長野県松本市である。中山間地域の多い長野県佐久穂町では、農業インフラの共同管理に象徴される農村集落ベースのコミュニティ再編が喫緊の課題であった。そこで、実施したフューチャー・デザイン・ワークショップではコミュニティの現状分析と課題の抽出を行った。一方、長野県松本市では、COVID-19感染症対策下での活動となったため、Zoomを用いた共同研究会や学習会を重ね、自治体単位より小さい行政区単位でのフューチャー・デザイン・ワークショップを開催するための手法を編み出し、松本市中央地区で実践した。住民自治のテーマにフューチャー・デザイン・ワークショップを取り入れることで、持続可能性の観点から地域のまちづくりを検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、メカニズムデザインとフューチャー・デザインを用いて、よりよい農地集積を「デザイン」することにある。2021年度は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策下での活動となった。農地集積のメカニズムデザインに関する研究は、既存データを基にしたシミュレーション分析が主であったため、COVID-19の影響を大きくは受けず、ある程度研究を推進することができた。一方、農村現場にけるフューチャー・デザインの実践には、ワークショップ、ラボ実験、フィールド実験が不可欠となる。特に、ワークショップの開催にあたって、関係者とのスケジュールの調整や方法の共有等の緊密なやり取りが欠かせない。また、数十名の対象地域住民による、対面でのワークショップが必須であるが、2021年度はCOVID-19の帰趨が見通せない中で、予定していたワークショップの開催が順延となることが多々生じた。長野県松本市とはZoomを用いた共同研究会や学習会を重ねることで、フューチャー・デザイン・ワークショップを開催することはできた。しかし、ワークショップでは参加者数や参加者が発言しやすい環境と雰囲気の醸成が重要であるが、もともと予定していた規模での開催はもちろん、感染対策のためワークショップ参加者同士の物理的距離(ソーシャルディスタンス)の必要性から、平常時に実施できるような密なワークショップの開催には至らなかった。 COVID-19の趨勢は、科研費申請時には十分に予想されていなかったこと、対面でのワークショップが不可欠であるという本研究の特徴から、現在までの進捗はやや遅れている状況にある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、以下の通りである。 第1に、複数の農地集積メカニズムの提示と検証である。昨年度提案された農地集積メカニズムはシミュレーションレベルの分析であったため、今後の研究では、実際の農家の意向を反映させた分析を行う。また、農地集積メカニズムのパフォーマンスを実験経済学の手法を用いて検証する。具体的には、安定性や効率性の基準から農地集積メカニズムを評価するため、実験デザインを構築し、実験室における予備実験を行い、実験デザインの修正を行う。農業従事者間の社会的密着度と関係継続性の高い農村特有の社会条件に適用できるような農地集積メカニズムを構築する。 第2に、農村現場におけるフューチャー・デザイン手法の「構造化」と効果測定である。昨年度に引き続き、農村現場にフューチャー・デザインを上手く適用できるように、フューチャー・デザイン討議手法を「構造化」し、討議の際に提供される情報が意思決定に及ぼす影響を検討する。また、実装を想定する農村エリアにおいて、実装作業への協力者(自治体職員を含む)を集め、実装に向けた連携構築を進める。その間、フューチャー・デザイン手法が討議参加者の意思決定プロセスに及ぼす効果(ワークショップ前後の社会的選好や時間選好及びリスク選好の変化)を測定するため、実験室及びフューチャー・デザイン実装現場における実験デザイン(質問票の作成を含む)を構築する。
|