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2022 年度 実績報告書

浅い湖からのメタン放出の季節・年次変化は富栄養化に対してどのように応答するか?

研究課題

研究課題/領域番号 21H02315
配分区分補助金
研究機関信州大学

研究代表者

岩田 拓記  信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (10466659)

研究分担者 朴 虎東  信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (20262686)
宮原 裕一  信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (80311330)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードメタン / 渦相関法 / 湖 / 溶存メタン濃度 / 培養実験 / 富栄養化 / シミュレーション
研究実績の概要

浅い湖沼は重要な温室効果ガスであるメタンの放出源である.湖からのメタン放出は温度などの物理環境要因だけでなく,富栄養化に伴う堆積層への有機炭素供給の増加などの生物地球化学的要因によっても影響を受けることが提案されている.本研究は,メタン放出の連続測定,堆積層への有機物供給及び水質測定,堆積物中のメタン生成実験を融合することで,湖の栄養レベルの変化が大気へのメタン放出の季節・年次変化にどのように,そしてどの程度影響するかを明らかにすることを目的としている.
2022年度には,渦相関法によるメタン放出量,気象・湖内環境の連続測定,定期的な溶存メタン濃度の観測,水質観測を実施した。衛星データを用いて有機物供給源のひとつである水生植物分布の特定を行った.また、湖底堆積物中におけるメタン生成が藍藻添加に対してどのように応答するかを明らかにするために,培養実験を実施した.
データ解析から、以下のことが明らかとなった。(1)これまでの7年間のメタン放出データを取りまとめ,その経年変化が水生植物繁茂面積と関係していることを明らかにし,水生植物の根からの堆積物への炭素供給がメタン放出の年変動に関係している可能性を示した.(2)衛星データとランダムフォレストモデルを用いることでヒシの分布の季節変化を推定できることを示した.(3)渦相関法で測定したメタン放出を拡散とバブルによる放出に分離する手法の検証を行い、その妥当性を示した.(4)藍藻,珪藻,水生植物を添加した堆積物ではメタン生成速度が有意に増加することを示した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題で計画していた研究は順調に実施できている.
メタン放出や気象・湖内環境の連続観測は最大限欠測の無いように実施しており,季節変化や年々変動を明らかにするデータの取得ができている.メタン放出の年々変動を説明する要因の解析も進めており,それにより夏のメタン放出量が年によって異なり、水生植物繁茂量と相関しているが明らかとなった.計画になかった有機物供給源のひとつである水生植物の繁茂面積の評価方法を確立できた.
渦相関法によるメタン放出測定はそもそも欠測を含むものであるが、その補間をランダムフォレストモデルを用いて行うことを検討した.また,拡散放出とバブル放出に分離する手法の検証のために、独立したメタン拡散放出観測を実施し、その比較により妥当性を示した.
水質および堆積層への有機炭素供給の観測も継続して実施できている.クロロフィルa濃度の測定は湖心に加えて沿岸帯でも開始した.
藍藻添加の培養実験については予定よりも早く実施できており,藍藻、珪藻、水生植物であるヒシやクロモの添加がメタン生成速度を有意に上昇させることがわかった.次年度は異なる温度での培養実験を計画している.
メタン放出に関連する窒素循環に関して、諏訪湖からの一酸化二窒素の放出量の測定を実施し,その日変化や季節変化を明らかにした.

今後の研究の推進方策

今後も予定通り計画を進めて,観測の継続をおこなう.それに加えて,有機物供給源である水生植物の分布面積の変化を確立した手法を用いて推定することを予定している.メタン放出データの欠測補間を行い,季節単位や年単位での放出量の変動の解析を実施する.
培養実験においてはこれまでに凍結乾燥した分解しやすい状態の有機物を添加していたが,それに加えて生の有機物を添加し,メタン生成が開始されるのに要する時間の評価を行う.また,温度と有機物添加のメタン生成に対する相乗効果の有無について実験で明らかにする予定である.
藍藻添加に対するメタン生成の応答,諏訪湖からの一酸化二窒素放出に関して論文にまとめる予定である.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (11件)

  • [国際共同研究] ストックホルム大学/ウプサラ大学(スウェーデン)

    • 国名
      スウェーデン
    • 外国機関名
      ストックホルム大学/ウプサラ大学
  • [雑誌論文] Bulk Transfer Coefficients Estimated From Eddy‐Covariance Measurements Over Lakes and Reservoirs2023

    • 著者名/発表者名
      Guseva S.、Armani F.、Desai A. R.、Dias N. L.、Friborg T.、Iwata H.、Jansen J.、L?k? G.、Mammarella I.、Repina I.、Rutgersson A.、Sachs T.、Scholz K.、Spank U.、Stepanenko V.、Torma P.、Vesala T.、Lorke A.
    • 雑誌名

      Journal of Geophysical Research: Atmospheres

      巻: 128 ページ: -

    • DOI

      10.1029/2022JD037219

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Origin of Deep Methane from Active Faults along the Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line between the Eurasian and North American Plates: 13C/12C and 14C/12C Methane Profiles from a Pull-Apart Basin at Lake Suwa2022

    • 著者名/発表者名
      Urai Atsushi、Takano Yoshinori、Matsui Yohei、Iwata Hiroki、Miyairi Yosuke、Yokoyama Yusuke、Miyabara Yuichi、Ohkouchi Naohiko、Park Ho-Dong
    • 雑誌名

      ACS Earth and Space Chemistry

      巻: 6 ページ: 1689~1697

    • DOI

      10.1021/acsearthspacechem.1c00392

    • 査読あり
  • [学会発表] 衛星画像を用いた諏訪湖における浮葉植物と沈水植物の分布域の推定2023

    • 著者名/発表者名
      澤野耕平,岩田拓記,楊偉,飯塚浩太郎
    • 学会等名
      日本農業気象学会2023年全国大会
  • [学会発表] 浅い富栄養湖からのメタン放出の経年変動の制御要因2023

    • 著者名/発表者名
      山田基,岩田拓記,宮原裕一,平田竜一,高橋善幸
    • 学会等名
      日本農業気象学会2023年全国大会
  • [学会発表] 諏訪湖における一酸化二窒素放出量の日変化と変動要因2023

    • 著者名/発表者名
      岩田拓記,川岸駿太,宮原裕一,高橋けんし,永野博彦,鈴木一輝,浦井暖史,伊藤雅之
    • 学会等名
      日本農業気象学会2023年全国大会
  • [学会発表] 異なる自生性有機物の添加に対する富栄養湖堆積物中のメタン生成応答の違い2023

    • 著者名/発表者名
      Yang Chun Jet,岩田拓記,朴虎東,宮原裕一,伊藤雅之,浦井暖史,高野淑識
    • 学会等名
      日本農業気象学会2023年全国大会
  • [学会発表] 日中における諏訪湖上の内部境界層の発達2023

    • 著者名/発表者名
      中島望,岩田拓記
    • 学会等名
      日本農業気象学会2023年全国大会
  • [学会発表] 断層湖堆積盆から湧出する深部メタンの起源と表層生態系への影響:糸魚川静岡構造線と中央構造線の交点のカーボンサイクル2022

    • 著者名/発表者名
      浦井暖史,高野淑識,松井洋平,岩田拓記,宮入陽介,横山祐典,宮原裕一,大河内直彦,朴虎東
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2022年大会
  • [学会発表] 異なる自生性有機物の添加に対する富栄養湖堆積物中のメタン生成応答の違い2022

    • 著者名/発表者名
      Yang Chun Jet、岩田拓記、朴虎東、 宮原裕一、伊藤雅之
    • 学会等名
      日本農業気象学会関東甲信越支部2022年度例会
  • [学会発表] 浅い富栄養湖からの CH4放出の経年変動の制御要因2022

    • 著者名/発表者名
      山田基,岩田拓記,宮原裕一
    • 学会等名
      日本農業気象学会関東甲信越支部2022年度例会
  • [学会発表] 諏訪湖における一酸化二窒素放出量の日変化と変動要因2022

    • 著者名/発表者名
      川岸駿太,岩田拓記,高橋けんし
    • 学会等名
      日本農業気象学会関東甲信越支部2022年度例会
  • [学会発表] 衛星データを用いた諏訪湖における浮葉植物と沈水植物の分布域の推定2022

    • 著者名/発表者名
      澤野耕平,岩田拓記,楊偉,飯塚浩太郎
    • 学会等名
      日本農業気象学会関東甲信越支部2022年度例会
  • [学会発表] 日中における諏訪湖上の内部境界層の発達2022

    • 著者名/発表者名
      中島望,岩田拓記
    • 学会等名
      日本農業気象学会関東甲信越支部2022年度例会

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公開日: 2023-12-25  

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