研究課題
乳房内の乳腺上皮細胞は妊娠期に乳管と乳腺胞のネットワーク構造を発達させ、分娩後の泌乳期に乳成分産生を行う。しかし、乳腺上皮細胞の乳腺上皮細胞は温度・伸縮などの物理的刺激やpH変化・生理活性物質などの化学的刺激に曝されることによって変化する。近年、これらの物理化学的刺激を感知する受容体としてTRPチャネルに関する論文が多数報告されている。しかし、妊娠期の形態形成と泌乳期の乳産生において、乳腺上皮細胞のTRPチャネルがどのように関与しているか、現時点で不明な点が多い。そこで本研究では物理化学的刺激を感知するTRPチャネルが乳腺組織の形態形成と乳分泌を制御する機構の解明を進めている。2022年度までに得られた研究結果をさらに精査した結果、培養下の乳腺上皮細胞の頭頂部側にTRPV4が感知する物理的刺激である静水圧を負荷すると、その圧力の強さや時間に応じて、カゼインの分泌量やタイトジャンクション構成タンパク質の発現量が変化することがわかった。また、静水圧負荷は乳腺上皮細胞の乳産生能力を上方調節するSTAT5やグルココルチコイド受容体の活性化を阻害しつつ、炎症性のシグナル分子であるSTAT3やNF-kappaBの不活性化をも誘導することがわかった。さらに、周期的な静水圧の負荷がカゼインの分泌量を増加させることもわかった。続いて、培養下で得られた知見が乳用家畜にも応用可能かを確認するため、泌乳ヤギにTRPA1とTRPM8を活性化するメントールを投与する実験を行った。その結果、乳量が減少し、抗菌活性をもつS100A7およびS100A8の乳中濃度上昇が確認された。一方、炎症性サイトカインであるTNF-alphaやIL-10の乳中濃度も上昇しており、TRPチャネルが乳量や乳成分組成に影響することが示唆された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://lab.agr.hokudai.ac.jp/cell_tissue_biology/