研究課題/領域番号 |
21H02344
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
豊後 貴嗣 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (40325361)
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研究分担者 |
新居 隆浩 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (90804873)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ストレス / 腸内細菌叢 / 腸管免疫機能 / 遺伝子多型 / 腸内環境 |
研究実績の概要 |
実験1:ニワトリの加齢が腸管および卵管粘膜の細菌叢と炎症反応に影響を調査した。約280日齢(若齢区)と700-1000日齢(高齢区)の白色レグホン産卵鶏を供試した。総排泄腔内の通常便と卵管膣部粘膜のスワブから細菌DNAを抽出し、腸内と膣部細菌叢を解析するとともに、腸管と卵管の粘膜組織の炎症性および抗炎症性サイトカインの遺伝子発現とタイト結合関連分子の遺伝子発現を解析した。その結果、若齢区の腸内では粘液分泌誘導や酪酸産生能を持つ菌種が含まれるAkkermansia属やFaecalibacterium属が、高齢区では病原性細菌を含むGallibacterium属やCorynebacterium属が優勢となった。一方、膣部ではグラム陰性桿菌のComamonadanceae属の菌が高齢区で若齢区より増加した。回腸粘膜の炎症性サイトカインのIL-6の発現や、抗炎症性サイトカインのTGFβ3やタイト結合関連分子のclaudin-3は高齢区で高値を示し、回腸の絨毛/陰窩比は高齢区で若齢区と比べて低下した。卵管膣部ではIL-1β、TGFβ4、CLA3が高齢区で高値を示し、子宮部ではTGFβ4とCLA1が高齢区で若齢区より高かった。 実験2:デキサメタゾンをニワトリヒナに投与して腸内細菌叢に及ぼす影響を調査した。5日齢ヒナにデキサメタゾンを投与したDEX区および生理食塩水を投与した対照区を設けた。投与2時間後、各個体から盲腸内容物を採取した。その結果、DEX区のFirmicutes門およびProteobacteria門の細菌数が、対照区よりも減少した。OPLS解析の結果、Firmicutes門では、g_Faecalibacteriumおよびg_BlautiaのDNA量が対照区よりもDEX区において低値、Proteobacteria門では、f_Enterobacteriaceaeが低値であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の2点について成果を挙げることができたことから順調であると判断した。 ・ストレスによる腸内環境の悪化モデルを構築できたこと。 ・加齢に伴う腸内細菌叢の変化を明らかにするとともに腸内環境の悪化に関与する可能性のある細菌を特定できたこと。
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今後の研究の推進方策 |
・ストレスからの回復に伴う腸内細菌叢の変化を調査するとともに、回復の是非に関連する細菌群を探索すること。 ・牛の腸内細菌の中から有益である可能性の細菌群の移植を検討し定着の可否を調査する。 ・同居個体間での細菌叢の違いを調査するとともに遺伝子多型との関連性について検討を加える。
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