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2021 年度 実績報告書

分娩後に起きる肝ERストレス亢進機序とその影響の解明:乳牛の疾病多発を防ぐ新戦略

研究課題

研究課題/領域番号 21H02349
配分区分補助金
研究機関国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

芳賀 聡  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主任研究員 (90442748)

研究分担者 米倉 真一  信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (40443113)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード高泌乳牛 / 肝臓 / 小胞体ストレス / 周産期疾病
研究実績の概要

【本年度の実施内容・成果】分娩後不良となる乳牛は臨床的健康牛と比較して分娩直後の肝小胞体ストレス亢進が重篤でより強く肝機能低下と炎症が誘導される、という仮説を検証すべく、フィールドワークにおいて48頭の周産期乳牛から分娩後の肝生検組織サンプルを収集するに至った。一部の解析を先行して実施し、分娩後すぐに乳房炎を発症した乳牛群と臨床的健康牛群の産褥期の肝臓を比較した結果、乳房炎発症群では、肝臓のXBP1(小胞体ストレス応答マーカー)およびHP(正の急性相タンパク)の発現亢進とその長期化、対してALB(負の急性相タンパク)発現の強い抑制と血中アルブミン濃度の低下が認められた。乳房炎により乳腺局所で発生した炎症性因子が肝臓に流入し、それらの刺激が肝臓の小胞体ストレス応答の過剰な活性化を励起することで肝機能を低下させた可能性が示唆された。この他に、後産停滞や子宮蓄膿症を罹患した分娩後不良牛群、そして難産や双子産経験牛からサンプルを得ている。ラボワークにおいては、考案確立した肝組織スライス培養法(ex vivo)の適用条件を精査するため、核内受容体Liver X receptor (LXR)のアゴニストT0901317 (T090)刺激による標的遺伝子ABCA1(HDLトランスポーター)の発現解析を行い、刺激濃度および刺激時間依存的な刺激応答を確認した。そこで、分娩時に血中濃度が高まる成長ホルモン(GH)が分娩前後の乳牛の肝臓に及ぼす直接的作用を検証するため、分娩1ヵ月前・分娩直後・分娩1週後の乳牛の肝生検組織スライス培養を行った。
【意義・重要性】本年度の研究遂行により、「乳牛において多発する分娩後の体調悪化や疾病発症にはこれまで見出されていなかった肝臓で発生する重篤な小胞体ストレスが関与している」という新たな仮説の検証に必要な貴重なサンプル収集と実験系確立が着実に遂行された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナウイルス感染拡大が継続した本年度において、その影響として、勤務体制の制限に加え、試薬や消耗品の購入納品、外注分析等に制限があり、当初の計画を一部変更した。具体的には、フィールドワークにおける飼養試験に重点を置き、周産期乳牛からのサンプリングを集中的に遂行した。その結果、R5年度までかけて行う予定であった50頭規模の周産期乳牛からのサンプリングをほぼ達成した。これにより、すでにサンプルは揃っているため、次年度からは分析を中心としたラボワークを集中的に進めることができる状態となった。計画は一部変更となったものの、全体研究計画を鑑み、着実に推進できたため、本年度の進捗は概ね順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

分娩後、肝小胞体ストレスを誘導する「負の因子」を特定し、発生機序を解明するため、肝臓の小胞体ストレス、細胞死および炎症レベルについて各マーカー等を、遺伝子発現解析(リアルタイムPCR)、タンパク質発現解析(ウェスタンブロッティング、ELISA)により調べる。また、臨床的健康牛に比べ疾病発症牛の血中で増加する代謝産物およびサイトカインを、血液代謝プロファイリングやELISA測定により調べる。以上を基にしながら、「負の因子」候補を複数選定した後、肝組織スライス培養実験を行い、分娩後、肝小胞体ストレスを誘導する「負の因子」を特定し、その発生機序を解明する研究へと進展させる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 移行期乳牛の肝機能と小胞体ストレス応答2022

    • 著者名/発表者名
      芳賀聡
    • 雑誌名

      臨床獣医

      巻: 40(5) ページ: 29-34

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公開日: 2022-12-28  

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