研究課題/領域番号 |
21H02354
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
落合 謙爾 岩手大学, 農学部, 教授 (80214162)
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研究分担者 |
福田 智一 岩手大学, 理工学部, 教授 (40321640)
畑井 仁 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (40566535)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 鳥白血病ウイルス / 鶏 / 神経膠腫 / グリオーマ / プロウイルス |
研究実績の概要 |
本課題は1)プロウイルス量とグリオーマ発生率との関連,2)ALV (鳥白血病ウイルス) 株間のグリオーマ誘発能の厳密な比較,3)グリオーマ由来培養細胞の作製,4)グリオーマ由来培養細胞の分子生物学的解析からなり,これら4つの解析からレトロウイルスの多様な病原性の分子基盤を解明することを目的とする。初年度は項目1)を重点的に実施した。得られた成績は以下の通りである。1)ヒトレトロウイルスのHTLV-1では1感染細胞あたり1コピーのプロウイルスが挿入されるため,これに基づいて測定される感染細胞率はHTLV-1関連脊髄症の発症リスクの予測に利用されている。一方,鳥レトロウイルスでは神経膠腫とプロウイルス量の関連はわかっていない。そこで, リアルタイムPCRによるALVプロウイルス定量法を確立し,野外感染鶏の脳の核1個当たりのプロウイルス量を定量するとともに,神経膠腫の発生頻度を解析した。今回検索した日本鶏25羽中10羽 (40%) に神経膠腫が認められた。神経膠腫罹患鶏のうち 3例からALV株が分離され,いずれの株も過去に分離されたALV株Km_6249に高い相同性を示した (99.3~100%)。残りの7例からは複数の塩基配列が検出され単一のALV株を分離することができなかった。また,脳内プロウイルス量と神経膠腫の発生頻度には関連は認められなかった。一方,複数株が感染していた鶏から,2種の分子クローンを得ることができた。以上の成績から,神経膠腫はプロウイルス量,すなわち感染ウイルス量とは直接関連しないこと,検索した鶏の多くで複数のALV株が重感染していることが明らかになった。本研究で確立した ALVプロウイルス定量法は生前のウイルス量測定から病変解析,ALV発癌機序解析まで幅広い活用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に当たる今年度は本課題の基礎を築くALVプロウイルス定量法を確立し,野外例を用いて神経膠腫の発生頻度とプロウイルス量の相関を解析し,プロウイルス量が神経膠腫の誘発,形成には直接影響しないことが明らかになった。また,1羽の鳥には複数株のALVが感染していること,これらは分子クローンとして分離できたことから外来性ALVであることがわかった。また,項目2)の予備実験として実施した感染実験でもこれと矛盾しない成績が得られている。以上の成績から,本課題は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本課題は神経系ならびに心臓に病原性を示す鳥白血病ウイルスの解析を通して,レトロウイルスの多様な病原性の分子基盤を解明することを目的とする。初年度の検索から,本課題遂行に当たり購入したリアルタイム PCR装置を活用することにより幅広く応用可能なプロウイルス定量法を確立することができた。また,この定量法を用いて感染ウイルス量が関与する病変と関与しない病変に分けられることがわかった。次年度は野外で重感染していたALVのそれぞれの病原性を感染実験により解析し,それぞれの株が神経膠腫の発症にどのように関わっているかを明らかにする。
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