研究課題
目的達成のために計画している研究項目は、(1)NRF2やHIF活性が変化するモデル動物を用いた網羅的解析、(2)システムバイオロジー解析によるバイオマーカー候補分子の選定、(3)疾患モデル動物を用いた実証研究の3つである。最終的にはこれらの結果を総合的に考察して、腎のNRF2やHIF活性を非侵襲的に捉えて、腎の酸素状態を描出する。そしてそれに基づく診断シーズを提案すること、腎病理学分野の理解を進展させることなどを行う。研究計画では、最初の2.5年間で、1)および2)を、残りの1.5年間で3)を完成させることになっている。2022年度までには、上記(1)のうち、NRF2活性が変化する薬理学的モデル動物を用いた網羅的解析(マイクロアレイ解析)を実施した。KEAP1分子の構造を変化させるバルドキソロンメチルは、分解を妨げてNRF2を活性化する。この薬を用いて、NRF2活性が変化する薬理学的モデル動物を作製し、腎および尿中細胞外小胞を採材してマイクロアレイ解析を行った。その結果、腎および尿中細胞外小胞画分で共通に2倍以上あるいは50%以下に変化する9種類のmRNA、および1種類のmiRNAを発見した。また、次世代シークエンサーを用いて尿中細胞外小胞画分を解析したところ、最終的には2種類の候補分子を見出した。HIFの活性化薬(PHD(プロリン水酸化酵素)阻害薬)を用いて、尿中細胞外小胞画分のマイクロアレイ解析を行った。その結果、鉄代謝に関与する分子をバイオマーカー候補として見出した。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要のところで述べたように、NRF2およびHIF活性を捉えられる可能性のある分子を見出したことから、当初計画の通りに順調に進展していると判断した。
順調に進捗しているので、今後も計画通りに研究を進める。具体的には2023年度に、腎のNRF2活性を検出する2種類の分子のバイオマーカーとしての妥当性を検討する。この検討では、in-situ hybridizationによる候補分子の腎内局在の解析や、尿中細胞外小胞中の核酸分子のPCR検出法などについての実験を行う。また、腎のHIF活性を検出できるバイオマーカー分子についてもすでに見出したことも前項で述べたが、この研究において、腎のHIFが薬剤でそれほど活性化されなかったことから、同薬剤の他の用量や他のデュスタット系薬剤などを使用することも視野に入れて検討を進める。上述以外には、見出したバイオマーカー候補分子によって急性腎障害モデルのNRF2活性やHIF活性を検出できるかどうかの検討も、2023年度には開始する。
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