本研究は、1)本態性高血圧症(高血圧症の大部分を占め、放置すると心不全や心筋梗塞、脳梗塞といった致死性の循環器疾患のリスクとなる原因が不明の高血圧)の病態制御に関わる血漿中エクソソーム(体の細胞から分泌される小型の小胞)由来因子を同定するとともに、2)その作用機序について多臓器連関を介した機構に着目して解明する、ことを目的として計画した。エクソソームと臓器連関に着目し検討を行う本研究の研究成果により、本態性高血圧症に対する新規の病態メカニズム解明と、画期的な治療・診断法の提案につなげることを最終的に目指すものである。本年度は、先ず、本態性高血圧症モデル動物において血圧変化に関わる血漿由来エクソソーム中の因子探索に関する検討を引き続き行った。昨年度に、自然発症高血圧ラット(spontaneously hypertensive rats: SHR)と対照のWistar Kyoto rats (WKY)の血漿からエクソソームを単離した後、エクソソームからタンパク質を抽出して、2次元電気泳動解析を行い、質量分析による解析を行った結果、両群で発現レベルに差があり、血圧変化に関わる可能性のある2つのタンパク質の候補を見出すことが出来た。これらのタンパク質発現レベルがSHRとWKYで差があるかをウエスタンブロット法で解析したが、明確な結果を得る事が出来なかった。そこで、血漿由来エクソソーム単離法の再検討を行った。また、本態性高血圧症モデルに加えて、肥満・2型糖尿病による高血圧症モデルの血漿由来エクソソームの解析にも着手し、比較・検討することとした。
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