本態性高血圧症の罹患率は我が国で非常に高く、動脈硬化症や心筋・脳梗塞等の心血管疾患のリスク因子となるが、その根本的な原因因子は特定されていない。エクソソームは核酸を含む種々の分子種を内包し、それらの細胞間での情報伝達を介して様々な疾患の病態を制御することが明らかになりつつある。加えて、様々な疾患の病態制御には複数の臓器間の相互作用を介した多臓器連関が重要である。本研究はこのような背景に基づき、疾患モデル動物を使用して、1)本態性高血圧症の病態制御に関わる血漿中エクソソーム由来の因子を同定するとともに、2)その作用機序について多臓器連関を介した機構に着目して解明することを目的とする。エクソソームと臓器連関に着目し高血圧症に関する検討を行う本研究の成果により、本態性高血圧症に対する新たな病態メカニズム解明と、画期的な治療・診断法の提案につなげることを目指すものである。当該年度は、本態性高血圧症モデルである自然発症高血圧ラット(SHR)と対照で正常血圧のウイスター京都ラット(WKY)の血漿中エクソソームを研究代表者の研究室で有効性を確認した方法で単離した後、エクソソーム由来のノンコーディングRNAの1つであるマイクロRNA (miRNA)を抽出し、次世代シーケンサーを用いてRNA sequence解析によるmiRNAの網羅的解析を行った。その結果、SHRの血漿中エクソソームにおいてWKY血漿中エクソソームと比較して、発現が上昇または減少するmiRNAとそれらの標的となる遺伝子の候補をいくつか同定した。
|