研究実績の概要 |
ブドウ球菌感染は牛伝染性乳房炎,豚剥脱性皮膚炎,鶏浮腫性皮膚炎・関節炎及び人の病院感染の重大な問題となり,宿主防御の綻びを縫って宿主に重篤かつ持続的な病態を形成する難治性感染症である.酪農・畜産業に甚大な経済損失をもたらしている.近年,我々の研究グループを含め,ブドウ球菌が産生するスーパー抗原毒素エンテロトキシン(SEs)が次々と発見され,本研究者らは新型毒素SER,SES,SET, SEY, SE02を発見した. 本研究では,人及び動物臨床分離株の多くが産生するSECとSEHを中心に,SEsの新たな病原機構を解析し,ブドウ球菌と宿主の攻防メカニズムを解明する.初年度では,SECとSEHを産生するブドウ球菌菌株からゲノムDNAを抽出・精製し,sec, seh 遺伝子を発現ベクター pGEX-6p-1に組換え,GST fusion protein system により大腸菌タンパク発現系を構築した. また,site-directed mutation法により,SEC, SEH分子上のスーパー抗原活性部位を変異させ,無毒変異mSECとmSEHを作製し,large scaleにより一部の無毒変異mSECとmSEH蛋白を大量精製できた. さらに,SEs遺伝子を保有・産生する菌株を用いて,シャットルカセットベクターを設計・構築し,毒素遺伝子をそれぞれノックアウトした isogenic mutant株(Δsec,Δseh) を作製できた.現在,これらの蛋白と菌株を用いて,ブドウ球菌感染におけるSEsの病原機構を解析中である.
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