研究課題
本年度では、主に下記の実験と解析を行なった。①スーパー抗原(SAg)が黄色ブドウ球菌のマクロファージ感染に及ぼす影響の解析: 本研究では、細菌感染初期に重要なマクロファージに対するSAgの作用を精査するため、まず、834株および全SAgノックアウト株に黄色蛍光タンパク質発現プラスミド(pP3-hfYFP)を導入し、それぞれWTおよびKOとした。RAW264.7細胞にWTまたはKOを感染させ、両株はいずれもMOI 25から100で傷害性は見られなかった。また、感染したRAW264.7細胞内の蛍光および生菌数はWTとKOで差が見られず、SAgはマクロファージへの侵入または貪食、菌のクリアランスに影響が無いことが示唆された。さらにqPCRによって菌感染時のマクロファージ内のサイトカイン遺伝子転写量を比較した。感染後24時間においてKOのIL-1β、IL-6、TNF-αはWTと比較して有意に高値を示した。SAgは細胞傷害性や菌の取り込みおよびクリアランスには影響がないものの、炎症性サイトカインの産生を抑制しマクロファージや他の免疫細胞の活性化を阻害することで、S. aureusの局所および全身感染に寄与することが示唆された。②スーパー抗原が黄色ブドウ球菌のマウス経鼻感染に及ぼす影響の解析: 本研究では、ヒト臨床由来株であり、8種のSAg遺伝子を保有するS. aureus 834株(WT)とその全SAg遺伝子欠損株であるSAgs KO株を用いてマウス感染実験を行い、SAgの存在がS. aureus の局所感染や全身への移行、免疫応答に影響を与えるか検討し、非常に有意義な結果が得られた。今後、さらにS. aureus感染におけるSAgの有無と各臓器における免疫応答との関連を精査し、SAgがS. aureusの感染成立や定着に及ぼす影響をより詳細に解析する必要がある。
2: おおむね順調に進展している
今年度の研究は基本的に予定の計画通り、834株および全SAgノックアウト株に黄色蛍光タンパク質発現プラスミド(pP3-hfYFP)を導入し、それぞれ黄色ブドウ球菌のマクロファージ感染に及ぼす影響、および黄色ブドウ球菌のマウス経鼻感染に及ぼす影響を詳細に解析した。これらの実験により非常に有意義な結果が得られた。今後、一部の実験結果についてさらに再現性実験を行う予定です。
今後、これまで作製した黄色蛍光タンパク質発現する834株および全SAgノックアウト菌株、スーパー抗原毒素蛋白、スーパー抗原活性を欠損させた変異毒素蛋白を用いて、黄色ブドウ球菌感染におけるスーパー抗原の新規病原性作用とその機序について、in vivo と in vitro 両方において詳細に解析する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Microbiology Spectrum
巻: 11 ページ: 913~923
10.1128/spectrum.01913-23
International Journal of Molecular Sciences
巻: 25 ページ: 395~395
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