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2023 年度 実績報告書

肝細胞増殖因子HGFによるMet受容体活性化機構の構造学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 21H02416
配分区分補助金
研究機関大阪大学

研究代表者

有森 貴夫  大阪大学, 蛋白質研究所, 准教授 (80582064)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード結晶構造解析 / チロシンキナーゼ型受容体
研究実績の概要

肝細胞増殖因子HGFとその受容体Metを介したシグナル伝達は,器官形成や組織の再生において重要な役割を担うが,この経路が異常に活性化されるとがんの進展をもたらしてしまう.細胞内へとシグナルを伝えるためには,HGFがMetに結合する前に,HGF自身がプロテアーゼ切断により不活性型から活性化型へと変換される必要があるが,そのメカニズムの詳細は明らかになっていない.本研究では,構造生物学的アプローチにより,HGFによるMetの活性化機構およびその制御機構の解明を目指す.
これまでに,小型抗体Fv-claspを結晶化シャペロンとして利用することで,活性化型HGFでは2.4Å分解能,不活性型HGFでは3.69Å分解能のX線回折データの取得に成功している.結晶構造から,プロテアーゼ切断に伴いHGFのループ構造(受容体とのインターフェースの構造)が大きく変化することが明らかになったが,一方で,切断部位を含む長いリンカーで繋がれた2つのドメインの相対配置は,リンカーが切断されても変化していなかった.これら 2つのドメインは主に静電的相互作用によって維持されていることが結晶構造から示唆されたため,ドメイン間の相互作用を破壊するような変異体をデザインし,ドメイン間相互作用の変化およびMetの活性化能を調べた.その結果,変異体では実際にドメイン間の相互作用が失われ,それに伴いMetの活性化能も著しく低下することが分かった.すなわち,HGFのプロテアーゼ切断は,受容体とのインテーフェースの構造形成のみに影響を与え,ドメイン間の相対配置には影響を与えないことが明らかになった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

論文執筆が予定よりやや遅れている.ただし,不活性型HGFおよび活性化型HGFの結晶構造解析については構造解析が完了し,PDBへの登録準備が整った.また,構造情報を基にした変異体解析等の実験もほぼ終了し,結晶構造から得られた知見を裏付けるデータが取得できている.

今後の研究の推進方策

本課題で得られたデータを整理し,論文執筆作業を進める.論文投稿に際して不足しているデータがあれば随時取得する.各種データの解析,PDBの登録を完了させ,年度内の論文投稿を目指す.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Locally misfolded HER2 expressed on cancer cells is a promising target for development of cancer-specific antibodies2024

    • 著者名/発表者名
      Arimori Takao、Mihara Emiko、Suzuki Hiroyuki、Ohishi Tomokazu、Tanaka Tomohiro、Kaneko Mika K.、Takagi Junichi、Kato Yukinari
    • 雑誌名

      Structure

      巻: 32 ページ: 536~549.e5

    • DOI

      10.1016/j.str.2024.02.007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Celastrol suppresses humoral immune responses and autoimmunity by targeting the COMMD3/8 complex2023

    • 著者名/発表者名
      Shirai Taiichiro, et al.
    • 雑誌名

      Science Immunology

      巻: 8 ページ: eadc9324

    • DOI

      10.1126/sciimmunol.adc9324

    • 査読あり
  • [学会発表] 小型抗体フォーマット「Fv-clasp」の開発とその応用2023

    • 著者名/発表者名
      有森 貴夫
    • 学会等名
      第74回日本電気泳動学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Fcヒンジ切断酵素IdeSを利用したハイスループット組換え蛋白質生産系の構築2023

    • 著者名/発表者名
      有森貴夫,高木淳一
    • 学会等名
      第23回 日本蛋白質科学会年会
  • [学会発表] Mirabody を用いた上皮成長因子受容体 (EGFR) の人工作動薬創成2023

    • 著者名/発表者名
      新田 あずさ、水谷 文哉、三原 恵美子、有森 貴夫、高木 淳一
    • 学会等名
      第23回 日本蛋白質科学会年会
  • [学会発表] がん特異的抗HER2抗体の構造から見えてきたがん抗原探索の新たな戦略2023

    • 著者名/発表者名
      有森 貴夫、加藤 幸成
    • 学会等名
      第32回日本がん転移学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Crystal structure of a cancer-specific anti-HER2 antibody2023

    • 著者名/発表者名
      T. Arimori, J. Takagi, Y. Kato
    • 学会等名
      XXI IUCr Congress 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] がん特異的抗体MMG49の抗原認識機構の解明に向けたX線結晶構造解析2023

    • 著者名/発表者名
      佐々木 優奈、保仙 直毅、高木 淳一、有森 貴夫
    • 学会等名
      令和5年(2023年)度 日本結晶学会年会
  • [学会発表] HER2の局所的なミスフォールド部位を認識する新規がん特異的抗体の開発2023

    • 著者名/発表者名
      有森 貴夫, 三原 恵美子, 金子 美華, 高木 淳一, 加藤 幸成
    • 学会等名
      第96回 日本生化学会年会
  • [学会発表] 受容体作動薬創成技術、Mirabody法の上皮成長因子受容体(EGFR)への応用2023

    • 著者名/発表者名
      新田 あずさ, 水谷 文哉, 三原 恵美子, 有森 貴夫, 高木 淳一
    • 学会等名
      第96回 日本生化学会年会
  • [学会発表] がん特異的抗HER2抗体の正常細胞/がん細胞識別機構2023

    • 著者名/発表者名
      有森貴夫,三原恵美子,鈴木裕之,大石智一,田中智大,金子美華,高木淳一,加藤幸成
    • 学会等名
      第2回 日本抗体学会

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公開日: 2024-12-25  

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