研究実績の概要 |
一次繊毛は細胞のアンテナとして機能する細胞小器官であり、その異常はさまざまな重篤な症状を引き起こす繊毛病の原因となる。この一次繊毛の形成や機能の維持には、繊毛内タンパク質輸送(IFT)装置が中心的な役割を果たしている。
骨格繊毛病患者では、IFT-B複合体のサブユニットであるIFT81に複合ヘテロ接合体変異が報告されているが、その変異がどのように病態を引き起こすかという分子基盤は不明だった。本研究では、IFT81の変異が他のIFT-Bサブユニットとの相互作用に影響することや、IFT81ノックアウト細胞でIFT81変異体を発現させると繊毛形成やタンパク質輸送に異常が生じることを明らかにした。さらに、骨格繊毛病の原因となるIFT81の変異が、Bardet-Biedl症候群(BBS)に見られる繊毛異常を引き起こし、BBS変異体を発現する細胞と同じ表現型を示すことを見出した(Tasaki et al., 2023, Hum. Mol. Genet.)。
IFT装置のモータータンパク質であるダイニン-2は、繊毛内で逆行輸送を担うために、まず順行輸送の積荷として繊毛先端まで輸送される必要がある。本研究では、IFT-B複合体のサブユニットであるIFT54とダイニン-2複合体の相互作用の詳細を調べた。その結果、ダイニン-2が順行性IFTトレインに積み込まれるためには、ダイニン-2とIFT-B複合体のIFT54サブユニット間にある複雑で多重的な相互作用が必要であることが明らかになった(Hiyamizu et al., 2023, Biology Open)。
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