研究課題/領域番号 |
21H02450
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坂内 博子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40332340)
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研究分担者 |
前田 純宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70443025)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | タウ / iPS細胞 / アルツハイマー病 / 1分子イメージング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は細胞膜分子のダイナミクスに着目することにより、既存の手法では見出されなかったアルツハイマー病の発症と進行に伴う細胞レベルの異常を新たに見出し、その分子機構を明らかにすることである。発症のごく初期に毒性のあるタンパク質凝集体が細胞にどのような異常がおこり最終的に細胞死を引き起こすのかを解明するために、本研究では、アルツハイマー病の特徴的な病理に伴って動態が変化する膜分子群を特定し、その下流でおこる生理機能の異常や細胞内シグナルの異常を明らかにする。将来的には本研究で得た知見を活用し、膜分子動態の異常を新たなアルツハイマー病の早期バイオマーカーとして提示し、脳神経疾患研究分野に膜分子動態に着目した新たな研究アプローチや検査方法を提示することを目指す。今年度はアルツハイマー病やタウオパチーに関わる変異を持つiPS細胞における分子ダイナミクスを計測した。タウのC末端にGFPをゲノム編集で誘導したヒトiPS細胞をニューロンに分化させ、 GFPを観察することによりタウの動体を調べた。ヒトiPS細胞タウ凝集を作るP301S変異、およびタウ凝集を作らないA152T変異を導入したiPS細胞由来のニューロンにおいて、軸索におけるタウクラスターの微小管依存的な輸送を解析した。輸送形態を定量化する指標を作成し、これらの変異を持つタウの輸送がよりアクティブであることを見出した。また、この輸送されるタウクラスターは液液相分離(LLPS)により形成されるdropletではないこと、LLPSを阻害するとタウクラスターの輸送が加速されることを発見した。本年は新たな挑戦として、タウシードの種類、濃度、投与方法を検討し、iPS細胞由来ニューロンにタウシードを取り込ませ、iPS細胞内に不溶性の凝集を誘導する方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光遺伝学的タウ操作ツールが困難を極めたが、別アプローチとして開始したタウシードの導入に成功し、アルツハイマー病モデルiPS細胞にタウ凝集を誘導したモデルが確立されたから。
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今後の研究の推進方策 |
疾患変異を持つiPS細胞培養細胞にタウシードを導入したもの、および光遺伝学的タウ操作ツールを用いて凝集を誘導したモデル細胞を用いて、細胞膜分子動態やシナプス形態、カルシウム動態を計測する。これにより、タウに変異がおこったごく初期に細胞が受ける毒性の実態を明らかにする。
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