研究課題/領域番号 |
21H02467
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
和田 健一 九州大学, 薬学研究院, 特任准教授 (20525919)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | ミトコンドリアゲノム / 合成DNA / マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアゲノム(mtDNA)は動物細胞における唯一の核外ゲノムであるが,実用的な改変技術が開発されていないため,その機能解析の実施が大きく制限されている.本研究では,真に自由自在なmtDNAの改変を可能にする合成DNAによるmtDNAの全置換を実現する技術体系を確立することで,mtDNA研究を強力に推し進める革新的な研究プラットフォームの創出を目指す.この目標のために,以下の3つの課題を設定した. (1)外来mtDNA受容細胞の創出: 申請者の独自技術であるマイクロ流体デバイスを用いたミトコンドリア移植技術を用いることで,ホモプラズミックなmtDNA変異を有する細胞ライブラリーを構築する.その中から,外来mtDNAを受容するとともにそれを優先して複製し,内在mtDNAが外来mtDNAに自律的に置換される細胞(外来mtDNA受容細胞)をスクリーニングする. (2)合成DNAに由来する自己複製子の構築: この研究課題では,単離ミトコンドリアに対する合成DNAを導入するエレクトロポレーション等の条件を検討するとともに,単離ミトコンドリアを外来mtDNA受容細胞に効率よく移植し,その後,mtDNAの置換が生じた細胞を選別する条件を検討する.これらの成果に基づいて,合成mtDNAに由来するミトコンドリア内で機能する自己複製子を構築する. (3)合成mtDNAによるmtDNA置換細胞の構築と機能解析: 上記の成果に基づいて,合成mtDNAで内在mtDNAを置換した細胞を構築し,それらの機能解析を行う.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である令和3年度には,独自のマイクロ流体デバイスを用いたホモプラズミックなmtDNA改変に必要な要素技術の開発に取り組んだ.その成果として,外来mtDNA受容細胞の創出に必要な新規のサイブリッド作製方法の構築に成功した.具体的には,マイクロ流体デバイス内に構築されたマイクロトンネルを介して,ピューロマイシン耐性遺伝子を発現するmtDNAドナー細胞とmtDNA欠損(ρ0)レシピエント細胞との間に一時的な細胞融合を誘発した後に,ピューロマイシンに暴露することで,ミトコンドリア移植が成立したレシピエント細胞を選別する方法を開発した.この操作によって,ミトコンドリアの呼吸機能回復に依存しないサイブリッドの作製に成功した.この成果は,現在論文投稿中である.これに加えて,外来mtDNA受容細胞のスクリーニングのためのmtDNA変異細胞ライブラリーの大規模化に貢献する,集積度を上げたマイクロ流体デバイスの開発も行った.これらの成果に基づいて,当初の予定通りホモプラズミックなmtDNA変異細胞ライブラリーの作製を進めている.これらの状況により,本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
研究初年度が経過したばかりではあるものの,現在のところ,研究計画前半の中核である外来mtDNA受容細胞の創出に至っていない.当初の計画の通り,今後もマイクロ流体デバイスを用いたmtDNA改変に基づいたホモプラズミックなmtDNA変異細胞ライブラリーの構築と,それに引き続く外来mtDNA受容細胞の創出を進める予定である.これに加えて,昨年度の試行において異種間ハイブリッドの作製による外来mtDNA受容細胞構築の可能性が見出された.そのため,今後は,この新しいアプローチも加えて外来mtDNA受容細胞の創出を目指す.
|