研究実績の概要 |
線虫 C.elegans の受精卵では、精子から持ち込まれるミトコンドリアとMOs (Membranous organelles)と呼ばれる二つの父性オルガネラが選択的オートファジーによって排除される。この父性オルガネラ選択的オートファジーは新規アダプター分子・ALLO-1によって制御されるが,その局在化を規定する分解シグナルの実体やALLO-1による膜形成の制御メカニズムは未だよくわかっていない。本研究では生化学的・遺伝学的手法により分解シグナルの解明を目指している。本年度は生化学的方法として、ALLO-1にビオチン化酵素TurboIDを融合タンパク質を生殖腺で発現する線虫株を用いて近位依存性ビオチン標識法の再度の条件検討および2回目の解析を行った。同定したTurboID-ALLO-1依存的にビオチン化される複数の候補因子について二次スクリーニングおよび機能解析を順次進めている。また、遺伝学的スクリーニングにより精子ミトコンドリア分解に異常を示す変異体の取得に成功した。戻し交配後に次世代シーケンスによるゲノム解析を行い,複数ラインについて原因遺伝子を同定した。これら因子についても各種マーカーを用いた詳しい表現型解析を行っている。加えて,ALLO-1の受精卵での動態を詳細に解析した結果,ALLO-1の基質周囲への局在化には少なくとも二つのステップがあること,後半のステップはオートファジー始動複合体との相互作用を介したフィードバック機構により制御されることを明らかにした(Sasaki, et al., 2024)。
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