これまでに研究室で維持する2種のアリ(Camponotus fellahおよびCamponotus japonicus)においてもエクジステロイドの正常発生における発現変化を定量することに成功し、さらに発生遅延が観察される女王不在環境においては幼虫側のエクジステロイドの発現低下を伴うことを明らかにした。女王不在環境においてエクジステロイドを人為的に幼虫に投与し、幼虫の発生への影響を探索したところ一部の個体において発生スピードが促進される効果が得られたものの、実験ボックスによるばらつきが大きく統計的な有意差は検出されていない。今後さらなる実験数の追加、及び実験条件の検討が必要とされる。 また、女王不在環境においては幼虫の変化に加え、同居する労働アリにおいて脂肪体や卵巣組織の形態変化が観察されており、今後は幼虫側のみならず成虫側での組織変容におけるエクジステロイドシグナルの寄与を明らかにしたい。
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