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2022 年度 実績報告書

植物の新奇器官「再生繁殖芽」の発生メカニズムと進化的基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H02513
配分区分補助金
研究機関京都産業大学

研究代表者

木村 成介  京都産業大学, 生命科学部, 教授 (40339122)

研究分担者 朝比奈 雅志  帝京大学, 理工学部, 准教授 (00534067)
武田 征士  京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (90508053)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード新奇器官 / 栄養繁殖 / 水陸両生植物
研究実績の概要

本研究では、水陸両生植物のRorippa aquaticaで発見された、栄養繁殖に関わる新奇器官「再生繁殖芽」の発生メカニズ ムや進化的背景の分子基盤を明らかにすることを目的として研究を進めている。令和4年度においては、以下の2項目の研究を進めた。
(1) 「再生繁殖芽の休眠打破のメカニズムの解明」:再生繁殖芽は、茎生葉が脱離して水がある環境におかれると、休眠が打破されて急速に成長が再開する。この休眠が打破されるメカニズムを明らかにするため、経時的なトランスクリプトーム解析を行った。脱離後、水分がある状況(休眠が打破される)と、水分がない状況(休眠が打破されない)の遺伝子発現を経時的比較したところ、アブシシン酸関係の遺伝子群が関与していることが示唆された。そこで、再生繁殖芽をアブシシン酸で処理したところ、成長を阻害することができた。以上の結果は、アブシシン酸が再生繁殖芽を休眠状態にしており、茎生葉が脱離して水分がある状況におかれるとアブシシン酸レベルが減少することで休眠が打破させることを示唆している。また、茎生葉が花茎から脱離しないかぎり、水で処理しても成長が再開することはないため、傷(脱離)が成長を誘導していると考えらえる。実際遺伝子発現解析から、脱理後に傷応答関係の遺伝子群の発現が上昇していることがわかった。
(2) 植物における再生繁殖芽の存在の普遍性の調査:イギリスとの共同研究により、再生繁殖芽が他の植物に存在するかを調べるため、幅広くアブラナ科植物を調査した。しかしながら、再生繁殖芽に相当する器官はRorippa aquatica以外では観察されなかった。 現在、さらに探索しているところであるが、以上の結果は、再生繁殖芽が珍しいものであることを示唆しており興味深い。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究項目(1) の「再生繁殖芽の休眠打破のメカニズムの解明」については、経時的なトランスクリプトーム解析によりアブシシン酸が再生繁殖芽を休眠状態にしていることを明らかにできた。また、研究項目(2)の「植物における再生繁殖芽の存在の普遍性の調査」については、イギリスとの共同研究当初の目的はほぼ達成することができた。以上のことから、本研究は概ね計画通り、かつ、順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

次年度については、今年度に実施した研究項目について引き続き取り組むとともに、「再生繁殖芽と離層の形成を司る遺伝子制御ネットワークの解明」に取り組む。これまでの研究で、再生繁殖芽の発生する時期および位置の詳細が明らかになりつつあるので、RNA-seq解析により、発生過程のトランスクリプトーム解析を行う予定である。再生繁殖芽の発生や離層形成に重要な遺伝子群を同定したい。研究成果は積極的に学会等で発表してフィードバックをえる。また、次年度は論文化に向けてデータの整理や執筆を開始する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (3件)

  • [国際共同研究] Imperial College of London(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      Imperial College of London
  • [国際共同研究] 中国科学院水生生物研究所(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      中国科学院水生生物研究所
  • [雑誌論文] Leaf cell morphology alternation in response to environmental signals in Rorippa aquatica2022

    • 著者名/発表者名
      Tomoaki Sakamoto, Shuka Ikematsu, Kazuki Namie, Hongwei Hou, Gaojie Li, Seisuke Kimura
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 23 ページ: 1-10

    • DOI

      10.3390/ijms231810401

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] SHOOT MERISTEMLESS participates in the heterophylly of Hygrophila difformis (Acanthaceae)2022

    • 著者名/発表者名
      Gaojie Li, Jingjing Yang, Yimeng Chen, Xuyao Zhao, Yan Chen, Seisuke Kimura, Shiqi Hu, Hongwei Hou
    • 雑誌名

      Plant Physiology

      巻: 190 ページ: 1777-1791

    • DOI

      10.1093/plphys/kiac382

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] アブラナ科植物Rorippa aquaticaの形質転換法およびゲノム編集法の開発、天野瑠美2022

    • 著者名/発表者名
      平野朋子、坂本智昭、木村成介、佐藤雅彦
    • 学会等名
      第63回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] 水陸両生植物Rorippa aquaticaは水中環境へ適応のためエチレンと光のシグナル経路を再配線し水没に応答した気孔分化制御を行なっている2022

    • 著者名/発表者名
      池松朱夏、馬瀬樹志、塩崎真子、中山壮大、野口楓子、坂本智昭、木村成介、鳥居啓子
    • 学会等名
      第63回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] 異質倍数性植物Rorippa aquaticaのサブゲノム解析2022

    • 著者名/発表者名
      坂本智昭、木村成介
    • 学会等名
      日本植物学会第86回大会
  • [学会発表] 水陸両生植物Rorippa aquaticaの水没による気孔分化抑制メカニズムをエチレン・光経路により解明する2022

    • 著者名/発表者名
      池松朱夏、馬瀬樹志、坂本智昭、鳥居啓子、木村成介
    • 学会等名
      日本植物学会第86回大会
  • [学会発表] 葉を蒔く 種をつけない花を咲かせて繁殖する2022

    • 著者名/発表者名
      池松朱夏
    • 学会等名
      第63回植物バイテクシンポジウム「植物器官形成の妙理」
    • 招待講演
  • [備考] 京都産業大学生命科学部産業生命科学科生態進化発生学研究室(木村研究室)

    • URL

      https://www.seisukekimura.com

  • [備考] 多葉性、遺伝子が司る植物の生存戦略

    • URL

      https://www.kyoto-su.ac.jp/research/researchprofile_01.html

  • [備考] 京都産業大学研究者データーベース

    • URL

      https://gyoseki.kyoto-su.ac.jp/ktsuhp/KgApp?resId=S000243

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公開日: 2023-12-25  

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