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2022 年度 実績報告書

長期記憶維持の分子細胞基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H02528
配分区分補助金
研究機関東京都立大学

研究代表者

坂井 貴臣  東京都立大学, 理学研究科, 教授 (50322730)

研究分担者 武尾 里美  東京都立大学, 理学研究科, 助教 (10642100)
上野 耕平  公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 副参事研究員 (40332556)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワードショウジョウバエ / 長期記憶 / 記憶維持 / CREB
研究実績の概要

記憶は動物が自然界で生存する上で必要不可欠な生命現象であり、脳における最も重要な機能の一つである。しかし、一度獲得した記憶がどのようにして脳で長期間維持され続けるのか、その分子機構の詳細はほとんど明らかになっていない。我々は近年、ショウジョウバエ(以下ハエ)が光を利用して長期記憶を維持しているという興味深い事実を見出した。さらに、ハエ記憶中枢(キノコ体)における転写因子CREBの活性化が記憶維持に必須であり、キノコ体のCREB転写活性も光依存的であることを見出した(Inami et al., 2020)。そこで本研究は、「光による長期記憶の維持」という現象を最大限に活用し、精度の高い遺伝子発現プロファイリングを通して「長期記憶の維持システム」を分子・細胞レベルで明らかにすることを目的とした。
精度の高い遺伝子発現プロファイリングを実現するには、記憶維持に利用されているニューロンのみからRNA抽出することが理想的である。ハエ記憶中枢には約4000個のニューロンが存在し、記憶中枢においてCREBが発現するニューロンは多数存在する。しかし、光によりCREB活性が上昇するニューロンはその一部である。本研究では、光によりCREB活性が上昇するニューロン、つまり記憶維持に機能している細胞のみを回収し、それらの
ニューロンにおいて光依存的に発現が上昇する遺伝子を網羅的に探索することにした。この研究遂行には複数の形質転換系統を利用する必要があるが、現在までに必要な系統の作製が完了した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画した形質転換バエのコンストラクトは以下の3つである:①6xCRE-FRT-stop-FRT-LexA系統、②MB-FLP系統、③LexAop-mCD8::GFP系統。①6xCRE-FRT-stop-FRT-LexA系統は、CREB活性を検出するためのコンストラクトである。CREBが活性化するとLexAの発現を誘導しようとするが、転写終結配列(stop配列)により転写は起こらない。stop配列は2つのflippase recognition target(FRT)の配列の間に挟まれており、組み換え酵素であるFLPが発現する細胞ではFLPがFRT配列を認識し、FRT-stop-FRT配列を取り除く。②MB-FLP系統は、キノコ体(MB: mushroom body)で組み換え酵素であるFlippase(FLP)を発現するコンストラクトである。したがって、6xCRE-FRT-stop-FRT-LexA系統と組み合わせると、主にキノコ体でFLP-outが生じ、転写因子であるLexA::GADが発現する。①と②のハエに加えて③LexAop-mCD8::GFP系統を組み合わせると、LexA::GADによりmCD8::GFPが発現し、CREBが活性化した細胞のみを可視化することができる。本研究の成功は、①6xCRE-FRT-stop-FRT-LexA系統とMB-FLP系統の作製にかかっている。昨年度には②MB-FLP系統を2系統(R13F02-FLPおよびR55D03-FLP)作製していたが、①に関しては、繰り返し配列が多く、通常のクローニングでは作製が困難であった。本年度は人工遺伝子合成により作製した配列をインジェクション用プラスミドに導入する方法により形質転換系統の作製に成功した。

今後の研究の推進方策

現在までに利用可能になった①6xCRE-FRT-stop-FRT-LexA、②MB-FLP、③LexAop-mCD8::GFP、これら3つのコンストラクトを持つ系統を作製し、キノコ体特異的にGFP蛍光が観察されるか検証する。さらに、mCD8::GFP陽性細胞を磁気ビーズを用いて効率よく回収方法を確立する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] PDGF-B secreted from skeletal muscle enhances myoblast proliferation and myotube maturation via activation of the PDGFR signaling cascade2023

    • 著者名/発表者名
      Hamaguchi H, Dohi K, Sakai T, Taoka M, Isobe T, Matsui TS, Deguchi S, Furuichi Y, Fujii NL, Manabe Y.
    • 雑誌名

      BBRC

      巻: 639 ページ: 169-175

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2022.11.085.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Circadian photoreceptors are required for light-dependent maintenance of long-term memory in Drosophila2022

    • 著者名/発表者名
      Inami S, Sakai T.
    • 雑誌名

      Neurosci. Res.

      巻: 185 ページ: 62-66

    • DOI

      10.1016/j.neures.2022.09.003.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Circadian Neuropeptide-Expressing Clock Neurons as Regulators of Long-Term Memory: Molecular and Cellular Perspectives2022

    • 著者名/発表者名
      Inami S, Sato T, Sakai T.
    • 雑誌名

      Front Mol Neurosci.

      巻: 15 ページ: 934222.

    • DOI

      10.3389/fnmol.2022.934222.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ストレス誘発性の性機能障害のショウジョウバエモデルの確立2022

    • 著者名/発表者名
      佐藤 智士、 坂井 貴臣
    • 学会等名
      第45回日本神経科学大会
    • 国際学会
  • [学会発表] 時計ニューロンLNdから放出される神経伝達物質は長期記憶に必須である2022

    • 著者名/発表者名
      倉田裕斗、 鈴木 悠希、坂井貴臣
    • 学会等名
      第45回日本神経科学大会
    • 国際学会
  • [学会発表] 時計ニューロンが制御する光依存的な記憶維持機構2022

    • 著者名/発表者名
      坂井貴臣
    • 学会等名
      第41回日本認知症学会学術集会シンポジウム
    • 招待講演
  • [備考] 東京都立大学大学院生命科学専攻 細胞遺伝学研究室

    • URL

      https://www.biol.se.tmu.ac.jp/labo.asp?ID=celgen

  • [備考] 東京都立大学 教員紹介

    • URL

      https://www.tmu.ac.jp/stafflist/data/sa/489.html

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公開日: 2023-12-25  

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