研究実績の概要 |
本研究では、25年間50個体群50,000個体というかつてないスケールで野外個体群の集団ゲノム解析を実施し、個体群動態論と集団ゲノム学の統合を試みる。これまで申請者は北海道空知川上流の河川性サケ科魚類においてメタ個体群動態を実証し、繁殖時期、発生スピード、回遊性といった適応形質が局所個体群間で分化していることを明らかにしてきた。さらに、長期野外調査のなかで、温暖化や生息地の分断化、台風による大規模攪乱など、進化的変化が起こりうる複数のイベントを目撃してきた。これは理論が先行している生態-進化動態(Eco-evolutionary dynamics)を検証できる貴重な“自然の実験系”を提供している。 当該年度は14-24年間の継続調査を行ってきた20個体群において個体群センサスを実施しDNAサンプルを採集した。気象データ、環境データと局所・メタ個体群動態の関係性を検討した。現実の空間構造を模したメタ個体群モデルを構築し、現在、遺伝子の動態も取り入れるように改良中である。また、約200個体のゲノムデータを解析して回遊性や繁殖時期などといった生活史形質に関連する遺伝領域を調べて、大規模解析にむけた遺伝子パネルの作成を進めている。
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