研究課題
本研究は、形質の多様性と共通性を結ぶ一般化理論の構築を目指す。近年の形質生態学の発展により、地球上の多種多様な植物の形質が定量的に評価されてきた。形質は闇雲に多様化しているわけでなく、物理化学的な共通性や生態・進化的なプロセスによる収斂により、ある程度規定される。しかし、形質の多様性と共通性を結ぶ一般化理論や概念は未だ存在しない。本研究では、ミクロ的な面での共通性として、光合成速度の決定要因である葉δ13C濃度に注目し、またマクロ的な面での共通性として、適応度の指標である相対成長速度に注目する。ミクロとマクロのそれぞれに、種を超えた強い共通性があり、その両者を繋ぐ諸形質に多様性があるという仮説のもと、本研究では、形質多様性の全体像を捉え、その論理基盤を整備し、フィールドデータによりその実証を目指す。初年度である本年度は、ミクロ面においては、新たに導入した光合成測定器と従来の測定器の比較検証を行った。また既存の葉の形質データの解析に取り組んだ。マクロ面においては、亜熱帯である屋久島において、二次遷移系列に沿って新たに複数の試験地を設定し、毎木調査と個体位置図の作成を行った。また北海道の苫小牧にある既存の二次遷移系列における試験地の再測定を行い、相対成長速度や生存率のデータを得た。さらに、相対成長速度の変化の要因を探るために、樹種による繁殖開始のサイズを調査した。その他、本プロジェクトに密接に関係する研究成果も複数あった。
2: おおむね順調に進展している
マクロ面の研究を中心に順調に調査が進んでいる。ミクロ面の研究は次年度から本格化させる予定である。本プロジェクトに密接に関係する研究成果が複数あった。
ミクロ面では、光合成測定を異なる緯度で実施し、形質の分化と収斂の関係に関するデータを得る。マクロ面では、亜熱帯の屋久島の毎木データを充実させる。また屋久島、和歌山、苫小牧において、繁殖形質のデータを充実させる。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
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