研究課題/領域番号 |
21H02574
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平崎 鋭矢 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 准教授 (70252567)
|
研究分担者 |
荻原 直道 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70324605)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ロコモーション / 霊長類 / キネマティクス / 幾何学的形態計測 / 椎骨 / 肩甲骨 / 骨盤 |
研究実績の概要 |
体幹は、進化とともにロコモーションにおける働きを変えて来た。魚類では側屈運動、哺乳類では前後屈運動が推進力を産生したが、二足歩行では回旋が推進に寄与するようになった。劇的な進化的背景を持つ体幹であるが、ロコモーション中の動きの詳細については、知見が限られている。従来の分析が体幹を一つの剛体と見なすモデルに基づいていたのが一因である。実際には、肩甲骨は胸郭に対して大きく動くし、胸郭も剛体ではない。これらの動きや変形がロコモーションに果たす役割は、ほとんどわかっていない。ヒトの動きには、二足歩行に特有な要素と、系統的な要素の両方が含まれ、それらの区別を明確にするには霊長類を用いた比較研究が不可欠である。本申請の目標は、ヒトと非ヒト霊長類の歩行時における体幹各部の動きと、その協調から成る全体としての動き(変形)を分析し、それらが姿勢制御・衝撃吸収・推進力産生に果たす役割と、その進化的背景を調べることである。令和3年度には、(1)ヒト歩行中の体幹運動解析実験のセットアップ、および(2)霊長類標本を用いた脊椎可動域の解析を実施した。(1)では、被験者がトレッドミル上を歩く際の体幹の動きを、光学式三次元位置計測装置を用いて計測する予備実験を行った。体幹の解剖学的標識点と、体幹背側に5-10cm間隔の格子状に配置した準標識点の3D座標を計測し、座標値と速度値を用いた主成分分析を行った。(2)では、ニホンザル新鮮死体の体幹部を回旋させつつCT撮像する計測を行い脊椎の回旋に主に貢献するのは腰部ではなく胸郭下部であることを明らかにした。令和3年度にはCOVID-19の影響を受け、実験およびその解析に遅れが生じた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19による行動制限の影響を受け、資料収集に遅れが生じた。また実験被験者の確保にも影響があった。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4度には、ヒト対象の実験的運動解析の継続、非ヒト霊長類標本を用いた運動学的解析、および霊長類標本を用いた形態学的解析を継続する。実験的運動解析では、令和3年度に確立した手法を用い、被験者の数を増やす。非ヒト霊長類新鮮死体を用いた椎骨回旋の計測では、手を加えない死体のCT撮像を用いた椎間関節運動の計測に加え、筋や上肢帯を除去した標本の直接計測も試み、各椎骨の動きのより詳細なデータを得る。霊長類の体幹を構成する骨標本計測では、種数、サンプル数を増やして、幾何学的形態計測を試みる。得られた結果から、骨や関節形状とポジショナル行動の関係を再検討し、成果を学会等で公表する。さらに、ニホンザルを用いた運動学実験について、実験と解析手法の検討、および予備実験を行う。ニホンザル実験は主として京都大で行う。
|