研究課題/領域番号 |
21H02583
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
緑川 光春 京都大学, 医学研究科, 教授 (60632643)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シナプス / 開口放出 / 電気生理学 / イメージング / 神経可塑性 |
研究実績の概要 |
生後発達期における中枢神経回路の形成過程では、生後初期に過剰に形成されたシナプスのうち必要なものだけが生き残って強化され、不要なものが除去されることによって洗練された神経回路が完成していく。本研究は「強化・除去されるシナプス前部の分子・機能・投射パターンはどのように異なり、それらが発達・経験依存的にどのように変化して成熟した神経回路になるのか」を学術的「問い」として設定し、その解明を目指している。 本年度は分子解析について、抗体染色によってシナプス前部でどのような分子配列の変化が生じているのかについて超解像蛍光顕微鏡を用いたナノスケール解析が進んだ。また、その結果と電気生理学的実験の結果に立脚したシミュレーションモデルの構築を進めており、シナプス前部からの生理条件下での開口放出動態の発達依存的な変化の分子基盤の実態に迫りつつある。本シミュレーションモデルはシナプス前部に対して直接ホールセルクランプ法を適用するという高度な電気生理学的手法によって得られた高精度の時間情報と、世界最高峰の空間解像度を誇る超解像イメージング技術による空間情報を統合したものであり、これまでない精度でシナプス前終末内部での開口放出動態を再現したものである。 また、抗体染色によって生き残るシナプス前部と除去されるシナプス前部での発現パターンに大きな違いがあった標的分子に対するコンディショナルノックアウトマウスの形態・機能解析を行うことにより、発達過程において生き残るシナプス前部と除去されるシナプス前部で生じる機能的差異の分子基盤に迫ることを目指している。 上記の形態・機能・分子の解析をマルチスケールで推進することにより、中枢神経回路の発達・再編メカニズムの解明を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発達・経験依存的なシナプス前部における分子基盤の解析については、共同研究によって超解像イメージングによるナノ微細構造の解析が当初の計画以上に進展している。また、さらに共同研究を拡大することにより、当初の計画にはなかったシナプス前部のナノ動態シミュレーションモデルの構築も大きく進展しており、発達・経験依存的なシナプス前部の変化を階層的に解明することに成功しつつある。一方で、コンディショナルノックアウトを用いた解析は研究代表者の異動の関係もあって形態解析に留まっており、機能解析の面で当初計画していた進捗状況には達していない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの本研究課題の進展によって明らかになってきたシナプス前機構の機能・分子・形態に関する発達・経験依存的な変化に関する知見を統合し、シナプスの発達に関する新たなコンセプトとして国際誌への発表を目指す。コンディショナルノックアウトマウスについても機能解析を進め、形態・機能両面への影響を精査して成果の発表を目指す。
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