研究課題/領域番号 |
21H02589
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡辺 雅彦 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70210945)
|
研究分担者 |
宮崎 太輔 北海道大学, 保健科学研究院, 准教授 (90374230)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 小脳 / 登上線維 / 平行線維 / シナプス刈込み / カルシウムチャネル |
研究実績の概要 |
興奮性シナプス活動により、イオンチャネル型グルタミン酸受容体iGluRと代謝型グルタミン酸受容体mGluRの活性化が起こる。iGluR活性化による脱分極は、小脳プルキンエ細胞ではP/Q型カルシウムチャネルの活性化を介して細胞外からCa2+流入を誘導する。受精の段階からこの遺伝子欠損を有するヌル欠損マウスでは、シナプス刈込みに障害が生じて、登上線維と平行線維のテリトリー不分離と登上線維の多重支配が残存することを示してきた。本研究課題では、シナプス回路完成後の成体期においてもシナプス回路維持機構として機能しているかを、成体期に遺伝子欠損誘導を行えるモデルを作成して明らかにすることである。 新潟大学脳研究所の崎村建司名誉教授らが以前開発した、P/Q型VDCC のチャネル本体をコードするCav2.1遺伝子のfloxマウスと、プロゲステロン誘導剤(RU-486)依存的に活性化するCreリコンビナーゼをプルキンエ細胞選択的に発現するGluD2-CrePRマウスを入手する。亮者を交配して、Cav2.1flox/CrePRマウスラインを得た。生後2ヶ月令の成体マウスにRU-486を腹腔投与したものを成体期欠損群(Cav2.1-/CrePR)、溶剤のみを腹腔投与したものをコントロール群(Cav2.1flox/CrePR)とした。研究代表者が開発したCav2.1特異抗体を用いて免疫染色法を用いて検討したところ、 Cav2.1-/CrePRのプルキンエ細胞における Cav2.1 タンパクの有意な減少が誘導後1週から確認された。一方、Cav2.1flox/CrePでは Cav2.1 タンパクの発現の減少は認められなかった。したがって、神経回路が完成した成体期においてCav2.1遺伝子を欠損させるモデルマウスが完成したことを確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
薬剤誘導型のP/Q型カルシウムチャネルの遺伝子欠損がタンパク質レベルでの消失で確認でき、今後の解析に使用できることを確認できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、このモデルマウスを用いて当初の予定通り、以下の研究を推進する。
B. 平行線維支配テリトリーと登上線維支配テリトリーの分離に関する解析:成体期欠損群とコントロール群の脳幹下オリーブ核に順行性神経トレーサーを注入して登上線維を蛍光標識し、登上線維が支配するプルキンエ細胞樹状突起(カルビンジンで蛍光標識)上のテリトリーを可視化する。一方、電子顕微鏡観察により平行線維シナプスを同定し、平行線維の支配テリトリーが遠位樹状突起に限局化しているか、近位部まで拡大しているかを同定する。これにより、遠近方向に分離した登上線維と平行線維の支配テリトリーが、成体期のP/Q型VDCC欠損により重複(不分離)する方向に変化するのかどうかを判定する。
C. 登上線維による単一支配に関する解析:研究代表者と分担研究者は、登上線維による支配様式が単一か多重か、余剰なシナプス形成がプルキンエ細胞のどこに形成されているかを同時に可視化できる形態学的判定法を開発し(Miyazaki T, Watanabe M: Development of anatomical technique visualizing the mode of climbing fiber innervation in Purkinje cells and its application to mutant mice lacking GluRδ2 and Cav2.1. Anat. Sci. Int. 86:10-18, 2011)、多くの研究成果を挙げてきた。この方法を用いて、登上線維の支配様式を定性的に解析する。さらに、電気生理学的方法を用いて、個々のプルキンエ細胞に入力する登上線維の本数と電気生理学的特性を定量的に解析する。
|