研究課題/領域番号 |
21H02612
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
佐々木 茂貴 長崎国際大学, 薬学部, 教授 (10170672)
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研究分担者 |
塩田 倫史 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (00374950)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脆弱X症候群 / リピート病 / FMR1遺伝子 / CGGリピート / 転写活性化 / 翻訳活性化 / 低分子創薬 |
研究実績の概要 |
本研究では、DNA中のCGGリピート配列に協奏的に自己集積する低分子を基盤に、リピート数増加に伴い発症する脆弱X症候群(FXS)に対する低分子創薬を目指す。FXSの原因遺伝子であるFMR1遺伝子にはCGGリピート領域があり、このリピート数が55以下では正常であるのに対し、200以上では遺伝子が転写されず、発症する。近年、CGGリピート領域のシトシン5位メチル化の阻害が、FMR1遺伝子転写を活性化し、症状を軽減させることがわかり、新しい創薬戦略として注目されている。本研究では我々が開発したCGGリピート配列に自己集積する低分子を基盤に、疾患モデル細胞のFMR1遺伝子の転写を活性化、さらには、翻訳活性化を検証し、FXSに対する新しい創薬を目指す。 2021年度までに、FMR1遺伝子のCGGリピートが伸長したヒトX 染色体を微小核融合した細胞株を用いてCGGリピート作用薬のスクリーニングを行い、FMR1 mRNA発現を上昇させるGW283を同定した。FMR1 mRNA発現が全く認められないFXS由来線維芽細胞においてDNA脱メチル化剤5-aza-2-deoxycytidineとGW283を混合処置することで、FMR1 mRNA発現を上昇させることができた。2022年度は、FXS由来線維芽細胞でFMRPタンパク質発現解析を行った。しかしながら、タンパク質発現の上昇は見られなかった。FXS患者由来細胞を用いて検討でも同様にFMR1 mRNAの発現上昇がみられたものの、タンパク質発現は上昇しなかった。CGGリピートを含むオリゴDNA2本鎖のシトシン5位メチル化に対するGW283の阻害効果を調べたところ、CGGを単独でもつ配列にくらべてメチル化阻害が観測された。このことからGW283はCGGリピートの再メチル化を阻害することによってFMR1 mRNAの発現を上昇させたものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、FXSの原因遺伝子であるFMR1遺伝子中にある膨大な繰り返しCGGリピートを標的にした低分子化合物を探索し、FMR1遺伝子がコードする脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)の産生を促し、創薬に展開しようとするものである。まず、FMR1 mRNA発現が全く認められないFXS由来線維芽細胞において、mRNA発現を活性化する低分子化合物の決定が重要である。この点では、DNA脱メチル化剤5-aza-2-deoxycytidineとの共存によって、高リピート配列選択的にmRNA発現を活性化する低分子GW283を見出したことは、重要な展開である。2022年度はGW283がCGGリピートのメチル化阻害能を持つこと明らかにした。このことから、5-aza-2-deoxycytidineの作用により脱メチル化されたCGGリピートの再メチル化が阻害されることでFMR1 mRNA発現が促進されたことが示唆された。しかしながら、タンパク質発現量は上昇しないことも明らかになった。理由は不明であるが、mRNAに含まれるRNAのCGGリピート部分が翻訳を阻害している可能性が考えられる。 治療目的のために必要な翻訳活性化は達成できていないものの、CGGリピート配列に作用する低分子化合物によるmRNA転写促進のメカニズムを検証することができたことから、研究はほぼ順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに決定したGW283により膨大な繰り返しCGGリピートからFMR1 mRNAの発現増強を確認した。酵素による実験でGW283はCGGリピートのメチル化を阻害したことから、RNAの発現増強はDNA脱メチル化剤5-aza-2-deoxycytidineの作用によって脱メチル化したCGGリピートの再メチル化をGW283が阻害していることによることが示唆された。しかしながら、FMRPの産生は増加しなかったことから、mRNAに含まれるRNAのCGGリピート部分の何らかの作用により翻訳が阻害されていることが想定された。そこで、2023年度はFMR1 mRNAのRNAリピート部分に選択的な相互作用をもつ分子を検索し、翻訳活性化効果を検証する。さらにグアニン4本鎖に作用し、ヘアピン―ループ構造に変化させる化合物(MR)についてもFMR1 mRNAへの作用を検討し、翻訳活性化効果を検証する。
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