研究課題
昨年度までに最適化した超解像顕微鏡および電子顕微鏡の条件を活用し、培養細胞における糖転移酵素のゴルジ体内の詳細な局在を明らかにした。具体的には、Apexを融合した糖転移酵素を利用して、糖転移酵素の近傍の分子にビオチン標識を行い本標識をプローブとすることで、電子顕微鏡像において糖転移酵素の局在を明らかにすることに成功した。特異的な糖鎖修飾を担う糖転移酵素の局在の要因を明らかにするために、近接依存性標識法により10種類を超える糖転移酵素の近傍分子の同定に成功した。また、蛍光タンパク質を融合した糖転移酵素をプローブとして、ゴルジ体分画小胞をセルソータで分離することに成功した。プロテオミクス解析により、こうしたゴルジ小胞に含まれるタンパク質を同定するとで、糖転移酵素と局在を共にする分子を明らかにすることができた。一方で、哺乳動物細胞にフコース転移酵素9(FUT9)を過剰発現させるとLAMP-1に特異的にLewis X糖鎖の修飾が認められたことを契機として、LAMP-1中の29残基からなるセグメントがFUT9との相互作用を規定することを見出した。本セングメントは、他の糖タンパク質のC末端に連結させただけで、FUT9依存的なLewis X修飾をもたらすことから、糖鎖修飾を制御する分子コードとして活用できる可能性を示した。
1: 当初の計画以上に進展している
超解像顕微鏡および電子顕微鏡を利用することにより、ゴルジ体における糖転移酵素の詳細な局在を明らかにすることに成功した。加えて、糖タンパク質分子を構成する特定のアミノ酸配列が、糖鎖部分の形成に深く関わることを見出すことができ、糖鎖修飾の制御機能の一端を明らかにすることができた。こうした結果の一部は、Communication biology誌に報告した。以上を鑑みて、当初の計画以上に進展していると判断した。
本年度までに蛍光顕微鏡や電子顕微鏡によって、ゴルジ体における詳細な糖転移酵素の局在を明らかにしてきた。一方でゴルジ体は細胞周期に応じてその構造が大きく異なることが知られている。次年度は、細胞周期の違いによってゴルジ体内の糖転移酵素の局在がどのように変化しているかを明らかにすることを目指す。これまでに近接依存性標識やゴルジ体小胞分画法により見出してきた、基質タンパク質が細胞ルートで遭遇した分子および糖転移酵素を取り巻く分子に着目して、それらタンパク質の機能解析を引き続き実施する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
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