研究課題/領域番号 |
21H02629
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
西川 喜代孝 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (40218128)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | インフルエンザ / アンフィソーム / LPCAT1 |
研究実績の概要 |
1)mVenusHA高発現MDCK細胞を用い、IAV感染に対してPVF-tet処理により産生誘導されるamphisomeを高純度に単離する系を確立した。本系においては、細胞をシリンジにて破砕し、デブリスを遠心にて除去後、得られた標品を抗LC3抗体にて標識した。さらにFACSにかけ、mVenusHA陽性、ならびに蛍光標識LC3陽性の画分をamphisomeとして分画した。本amphisomeを用いて、質量分析器LC-MS/MSを用い、タンパクの網羅的解析を行った。その結果、701種のタンパクが検出された。GO解析を行なったところ、確かにウイルス由来であるHAが検出されていること、さらにNS1やM1などのウイルスタンパクも存在していることが示された。またpathway解析の結果、特にARF1やRab familyをはじめとするendnocytosisや小胞輸送に関連するタンパクが多く存在していることが示された。 2)LPCAT1の高発現細胞を用い、誘導性amphisomeの形成ならびにウイルス感受性に対する効果を検討したところ、PVF-tet非存在下でも明らかに誘導性amphisome形成が促進すること、この時抗ウイルス活性が増強することを見出した。さらに、PVF-tetの抗ウイルス活性も十分に観察されることを見出した。このことから、LPCAT1の過剰発現により、PCの代謝サイクルで生じるlyso-PCに優先的にパルミチン酸が導入され、その結果DPPCの産生量が増強されることによりamphisomeの形成が誘導されたと考えられる。今回得られた知見は、すでに明らかにしているLPCAT1のノックダウンの効果とともに、DPPC合成に関わるLPCAT1が誘導性amphisomeの形成ならびにその抗ウイルス活性に必須であることを明瞭に示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回PVF-tet誘導性amphisomeのプロテオミクスを行い、その形成に重要と思われる複数の分子を同定できた。今後予定している、ABCA3高発現誘導性amphisomeを用いたプロテオミクスの結果と合わせることにより、より精度高く抗ウイルス性amphisomeの形成機構、機能解明が可能になると期待できる。 今回、DPPC合成に関わるLPCAT1が誘導性amphisomeの形成ならびにその抗ウイルス活性に必須であることを明瞭に示すことができた。今後DPPCからDPPSが合成される過程に必須の酵素であるPSS1の効果を検討することにより、抗ウイルス性amphisomeにおけるDPPSの機能を解明することできると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)ABCA3高発現MDCK細胞を用い、IAV感染に対して産生誘導されるamphisomeを高純度に単離する系を確立する。本amphisomeを用いて、脂質分析、タンパクの網羅的解析を行う。 2)siRNAを用いたPS合成酵素(PSS1)のノックダウン、PSS1の高発現細胞を樹立し(MDCK細胞あるいはヒト肺胞上皮細胞株A549を使用)、IAV感染に伴うamphisome形成ならびに細胞障害活性・ウイルス産生量に対する効果を、PVF-tet処理あるいはABCA3高発現条件下にて検討する。 3)DPPS合成の上流と考えられるLPCAT1のノックダウンにより、PVF-tet処理あるいはABCA3の高発現、いずれの場合にもamphisomeの形成誘導が顕著に阻害されることから、DPPSの作用点は誘導性amphisomeの形成過程にある可能性が高い。そこで、LPCAT1、PSS1のノックダウンあるいは高発現による各autophagy関連分子の発現変動・活性化への影響を検討することにより、DPPSの作用点を解明する。
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