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2021 年度 実績報告書

アンフィジニウム属渦鞭毛藻の有用二次代謝産物の探索と開発

研究課題

研究課題/領域番号 21H02637
配分区分補助金
研究機関高知大学

研究代表者

津田 正史  高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (10261322)

研究分担者 鈴木 健之  大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (10262924)
不破 春彦  中央大学, 理工学部, 教授 (90359638)
津田 雅之  高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (90406182)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード有用二次代謝産物 / 渦鞭毛藻 / 構造解析 / 全合成
研究実績の概要

新しいタイプの抗がん剤リードや再生医療に有用な分子の創成を目的として、アンフィジニウム属渦鞭毛藻が産生する有用二次代謝産物に関して、(A)生物活性を示す新規二次代謝産物の探索、(B)「代謝産物産生能の減衰」を回避する方法論の開発、(C)「難解な立体配座」のデータ集積と構造解析への活用法、(D)ポリケチド結晶化の検討、(E)イリオモテオリド-1a推定構造の全合成研究、といった研究を展開し、新たな医薬シード分子の創出を目指す。(A)西表島の海岸の砂泥より分離したHYA024株の培養抽出物より、新規マクロリド化合物イリオモテオリド-7aを単離した。各種二次元NMRスペクトルデータの解析により、新規19員環マクロリドであると帰属した。(C)では、立体配座解析の難しい官能基を持ち、立体配置の決定がなされているイリオモテオリド-14aと14bについて、それらの立体異性体を配座探索プログラムSpartan 20を用いて、安定配座を算出、続く密度汎関数法計算に基づいたNMR計算値を算出した。さらに計算配座と天然物データの相同性を検討した。結果、NMRの計算値と天然物の測定値から正しい立体異性体を判断することは困難であったが、結合定数の計算値と水素間距離には、正しい立体異性体と天然物に相同性が認められることがわかった。(E)イリオモテオリド-1aについてNMR構造解析と分子力場計算による配座探索に基づき、新たに改訂構造式を導出することができた。そこで、改訂構造式の側鎖部分を簡略化したモデル化合物を設定し、これを立体選択的に合成して、天然標品とNMRデータを比較することによる検証を行うこととした。モデル化合物の合成は、3つのフラグメントを鈴木-宮浦反応、山口法によるエステル縮合、細見-櫻井アリル化により順次連結する段階まで成功した。残すは脱保護とマクロ環の閉環である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

課題内の5個の研究テーマのうち、生物材料の収集の影響が少ない(C)と(E)の研究は、当初の計画どおりあるいはそれ以上に進展しているものと判断される。しかしながら、新型コロナ感染防護措置による県を跨いだ渡航制限により、生物試料の採集ができなかったため、 (A)の研究は、旧来から有する渦鞭毛藻を用いた研究以外は実施できず、やや遅れている現状である。特にイリオモテオリド類などの有用代謝産物を産生する渦鞭毛藻株は、高知県近海では新たに発見できていないため、生物材料と代謝産物が必要な(B),(D)の研究は遅れている状況である。

今後の研究の推進方策

((A) 新規生物活性化合物の探索については、沖縄県での渦鞭毛藻採集が可能となりそうなので、渦鞭毛藻の収集を実施し、新規化合物の探索を実施するとともに、現在までに得られているイリオモテオリド-7aについて、(C)で実施した立体化学の解析法を適用することで、8個ある不斉炭素の相対立体配置を推定するとともに、絶対立体配置の解析へと展開する。(B) 「代謝産物産生能の減衰」を回避する方法論の開発では、今後収集される渦鞭毛藻を利用して当初の計画通り研究を進めるが、当初海外での無腸類ヒラムシのサンプリングを想定していたが、沖縄県での収集にて切り替えて実施する。(C) 「難解な立体配座」のデータ集積と構造解析への活用法では、GaussianやConflexでの配座計算も実施し、Spartanとの結果との比較を行う。さらに他のマクロリド化合物の配座解析対象を拡張し構造データの収集を行う。(D)代謝産物の供給が可能した後、結晶化研究の検討を行う。(E) イリオモテオリド-1a推定構造の全合成研究では、イリオモテオリド-1aのモデル化合物合成は、保護基の脱保護が難航することが予想されている。反応条件の精査を行うが、場合によってはより容易に脱保護ができる保護基で代替することも検討する。その後、マクロ環を閉環メタセシスで構築して合成を完了する。モデル化合物と天然標品のNMRデータを比較し、よい一致を見せるようであれば全合成に着手する。また、合成と並行して、量子化学計算によるNMR化学シフトシミュレーションを行うべく、分子力場計算で発生した立体配座について構造最適化を行ったので、今後は統計処理により改訂構造式の確からしさを評価する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Tissue-specific regulation of 11β hydroxysteroid dehydrogenase type-1 mRNA expressions in Cushing’s syndrome mouse model2022

    • 著者名/発表者名
      Nishiyama Mitsuru、Iwasaki Yasumasa、Nakayama Shuichi、Okazaki Mizuho、Taguchi Takafumi、Tsuda Masayuki、Makino Shinya、Fujimoto Shimpei、Terada Yoshio
    • 雑誌名

      Steroids

      巻: 183 ページ: 109021~109021

    • DOI

      10.1016/j.steroids.2022.109021

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Amphidinium属渦鞭毛藻より単離した新規19員環マクロリドIriomoteolide-7aの構造2022

    • 著者名/発表者名
      津田正史、熊谷慶子、津田雅之
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] レプトリングビヤリド類のマクロ環部の構造・合成研究2022

    • 著者名/発表者名
      村田佳亮、森寛敏、不破春彦
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] エニグマゾールBの全合成研究2022

    • 著者名/発表者名
      合田佳弘、不破春彦
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] (+)-ネオペルトリドおよび(+)-9-epi-ネオペルトリドの全合成2022

    • 著者名/発表者名
      中里一貴、不破春彦
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] アルコールからアルケンへのエピメリ化フリーな一工程変換法2022

    • 著者名/発表者名
      水上大地、中川颯人、吉村惇、不動和樹、不破春彦
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] 15-epi-エニグマゾールAおよび誘導体の合成研究2022

    • 著者名/発表者名
      大山恭也、不破春彦
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] タンデム反応を基盤とするピロリジン合成:(-)-レパジホルミンAの全合成への応用2022

    • 著者名/発表者名
      半澤凌平、吉村惇、不破春彦
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会
  • [学会発表] 胚着床前後におけるマウス子宮でのレプチン受容体の発現解析2021

    • 著者名/発表者名
      茂川拓紀, 都留英美, 津田雅之
    • 学会等名
      第68回日本実験動物学会総会
  • [学会発表] 抗体の分泌機能異常がもたらすB細胞恒常性の破綻2021

    • 著者名/発表者名
      都留英美, 茂川拓紀, 溝渕雅章, 津田雅之
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会大会
  • [図書] 4次元統合黒潮圏資源学2022

    • 著者名/発表者名
      佐野有司、徳山英一、村山雅史、臼井朗、津田正史ほか
    • 総ページ数
      225
    • 出版者
      有限会社中島出版
    • ISBN
      978-4-904191-17-0

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公開日: 2022-12-28  

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