研究課題/領域番号 |
21H02640
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
青木 重樹 千葉大学, 大学院薬学研究院, 講師 (30728366)
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研究分担者 |
伊藤 晃成 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (30323405)
中村 亮介 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (50333357)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | HLA / ヒト白血球抗原 / 特異体質毒性 / 重症薬疹 / ERストレス |
研究実績の概要 |
私たちのこれまでの検討から、ヒト白血球抗原HLAを導入したマウスとしてHLA-B*57:01-Tgを作出しており、そこに原因となる薬物アバカビルを曝露することでHLA多型依存的な毒性所見を見出すことに成功している。別の研究課題から、特に抑制性の免疫を破綻させることで顕著な皮膚毒性が再現されることが分かっており、本Tgマウスにおける皮膚組織で何が起きているのかが、本研究課題においても重要となる。 実際にTgマウスより単離培養した表皮細胞ケラチノサイトにアバカビルを曝露すると、多型特異的に炎症性サイトカインやケモカインの発現レベルが上昇することが見出され、それは小胞体ERストレス下流で起こることも示唆された。さらに、IRE1のリン酸化やXBP1の発現上昇に代表されるERストレスも観察され、細胞内カルシウム濃度の増加も認められている。これらin vitroケラチノサイト培養系で認められた現象はin vivoにおける組織免疫化学染色からも同様に観察され、毒性を認める皮膚組織では特に顕著であった。ここで、肝臓や脾臓といった他の組織でも同様に観察を行ったが、皮膚組織のようなストレスは観察されず、組織特異的に生じている可能性が高い。また、皮膚組織で顕著なERストレスが毒性発現とどのように関連するのかを調べるために、ケミカルシャペロンの同時投与も行ったところ、興味深いことに、約半数のマウス個体で毒性の減弱を認めることができた。しかし、個体ごとに差が大きく、この理由やERストレスが毒性発現全体においてどの点にかかわっているのかは、今後の検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薬物毒性が惹起されるメカニズムとしてERストレスが重要である可能性がin vivo動物モデルからも示唆された。今後のin vitroおよびin vivo基盤研究を進めていくうえで重要な成果であり、組織特異性の解明への大きな一歩と言える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの検討から、特定のHLAを発現するケラチノサイトに皮膚毒性発症の原因となる薬物を曝露すると、IRE1のリン酸化に代表されるERストレスを発症することが見出された。また、HLA遺伝子導入マウスを用いた解析から、ケミカルシャペロンによるERストレスの緩和が、薬物毒性を減弱させる可能性が示唆された。これらの結果と我々の先行研究を考慮すると、細胞内におけるHLAの複合体形成過程で生じる異常が、ERストレスやそれに起因した毒性に繋がっていることが考えられる。 本年度は、そのストレス発生の組織特異性を解明するべく、HLA遺伝子導入マウスを用いて、特にHLA複合体の構造や細胞内動態に焦点を当てて解析を行う。毒性発症のリスクとなるHLA分子は、他と異なる糖鎖修飾を受ける可能性も見出していることから、その組織差についても検討を行いたい。また、将来的には毒性発症予測基盤の構築を見据えていることから、適切なケラチノサイト培養システムや遺伝子導入法についても検討を行う。併せて、オミクス解析などから、ケラチノサイトと他の細胞系との薬物応答の違いを評価し、皮膚毒性を生じやすい背景メカニズムの究明を試みる。
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