研究課題/領域番号 |
21H02762
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
宮澤 恵二 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40209896)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 上皮間葉転換 / TGF-β / Smad / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
Transforming growth factor-β(TGF-β)はEMT(上皮間葉移行)を誘導する代表的な細胞増殖因子であり、がん悪性化への関与もよく知られている。本研究はTGF-βによるがん細胞のEMT誘導シグナル伝達を研究材料として、①EMTに関連した各形質を誘導するシグナル伝達経路の分岐状況を検証すること ②がん悪性化に主要な役割を果たす分岐経路(形質変化)を同定することを目的としている。研究手法として、Smad3ノックアウト細胞にSmad3変異体を再導入し、TGF-β刺激後の細胞応答回復状況を確認する。 令和3年度はEMT関連形質のうち、葉状仮足の形成に必要なRac1の活性化を介して細胞運動性を亢進する経路について、Smad3のMH1ドメインに加えリンカー領域が関与することを新たに見出し、シグナル伝達に必要なアミノ酸残基を同定した。また、ストレス耐性のシグナル伝達についてはSmad3のMH2ドメインに責任部位があること、上皮細胞マーカーとして知られるE-cadherinの発現低下のシグナル伝達についてはMH1ドメインに責任部位がある可能性を見出した。さらにEMT関連形質のうち、細胞形態変化およびアクチン細胞骨格再編成のシグナル伝達について、EMT関連転写因子のSnailが関与することを明らかにした。また、このシグナル経路は細胞運動性を亢進する経路の一部を構成することを見出した。 これらの成果により、TGF-βによるEMT関連形質を誘導するシグナル経路の分岐状況が明らかにされつつあると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はSmad1/3あるいはSmad2/3キメラタンパク質をほぼ網羅的に作成し、複数のEMT関連形質の責任部位のマッピングを進めることができた。一部の責任部位についてはアミノ酸残基レベルで明らかにしている。この点で計画は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
キメラタンパク質を用いた現在の手法では、Snailの誘導に関与する領域をマッピングできていない。今後は点突然変異の導入も検討する。また、Smad3における責任部位の同定は進めることができているが、下流のシグナル伝達については、あまりよくわかっていない。今後はプロテオミクス解析等も視野に入れて検討を進める。
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