研究課題/領域番号 |
21H02786
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤木 文博 大阪大学, 大学院医学系研究科, 寄附講座准教授 (40456926)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | CRISPR-gRNA library / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
CRISPR-gRNA libraryによる網羅的遺伝子ノックアウトを活用した新しい「癌-免疫チェックポイント標的」を同定することを目指して、T細胞および腫瘍細胞に焦点を当てて研究を行った。 T細胞の機能低下に関与する遺伝子として前年度までに遺伝子X(未公表のため仮称)を同定し、遺伝子XをT細胞で特異的に欠損するコンディショナルノックアウトを作製した。遺伝子X欠損T細胞の機能を調べるためリステリア感染症モデルを用いたところ、感染症のeffector phase, contraction phaseおよびmemory phaseに関係なく、一貫して抗原特異的遺伝子X欠損CD8+T細胞は野生型に比べて末梢血に占める割合は低頻度であった。興味深いことに、抗原特異的遺伝子X欠損CD8+T細胞はメモリーT細胞のマーカーであるCD62Lの発現が高く、エフェクターT細胞のマーカーであるKLRG1の発現が低いことが明らかとなり、これは、遺伝子Xの欠損によりエフェクターT細胞への分化が抑制されたことを示唆した。 免疫チェックポイント阻害療法に抵抗性を示す腫瘍細胞の特徴として、MHC class Iの発現量の低下もしくは喪失が挙げられる。その特徴を示す細胞株としてメラノーマ細胞株であるB16細胞株が知られている。我々は、このB16細胞株の免疫原性を増強する標的遺伝子を探索するため、最初にB16細胞株にCas9を恒常的に発現する細胞株を樹立した。この細胞株はIFN-g処理によってMHC class Iを発現するため、遺伝子的にMHC class I発現能力が喪失していないことを確認した。現在、この細胞株にCRISPR-gRNA libraryを導入してMHC class Iを発現する集団でノックアウトされている遺伝子を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染実験室の改修工事により、研究の停滞が余儀なくされた面もあったが、感染実験以外の進捗状況も考慮に入れると総合的に概ね順調に進展していると考える
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今後の研究の推進方策 |
T細胞の機能低下に関与する遺伝子として同定された遺伝子Xについて、リステリア菌感染症モデルで得られた知見をもとに腫瘍免疫における遺伝子Xの役割について解析を進めていく。具体的には癌抗原特異的遺伝子X欠損CD8+T細胞と野生型CD8+T細胞を担癌マウスに移入し、anti-PD-1抗体を用いた免疫チェックポイント阻害療法を行い抗腫瘍効果を評価する。また、遺伝子X欠損CD8+T細胞の移入によって強い抗腫瘍効果が得られた際には、その機序について詳細に解析を行う。 B16細胞株の免疫原性を向上させる標的遺伝子の探索については、候補遺伝子の探索を引き続き行なっていく。また、TCF-1レポーターマウスを用いてTCF-1の発現や維持に関与する遺伝子も探索していく予定である。
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