研究課題/領域番号 |
21H02792
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
植田 幸嗣 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター がんオーダーメイド医療開発プロジェクト, プロジェクトリーダー (10509110)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 大腸がん / エクソソーム / 体細胞変異 |
研究実績の概要 |
本研究は新鮮大腸癌組織内、およびその培養分泌細胞外小胞内(以下細胞外小胞をEVと表記)に発現している変異タンパク質を独自のプロテオゲノミクス解析により定量的に一斉同定し、ここから術後早期再発例で特異的に発現が認められる細胞内、EV内変異タンパク質を特定、再発リスク関連変異タンパク質が持つ分子生物学的機能を明らかにすることで新しい機序の再発リスク診断、再発大腸癌治療法の開発に繋げることを目標とする。 大腸癌組織(正常部、癌部ペア)の全エクソンシークエンス解析から、アミノ酸配列変化を伴う一塩基バリアント(SNV)は272.7 ± 703.8 (22-3082)個、挿入欠失変異は12.4 ± 25.5 (1-113)個検出された。これらの塩基配列情報をアミノ酸配列に変換し、患者ごとの個別化タンパク質配列データベースを作成、癌部組織、および組織培養液由来EVのプロテオゲノミクス解析に供した。その結果、組織からは26.5 ± 18.7 (0-53)本、組織培養液由来EVからは8.4 ± 10.5 (0-23)本の体細胞変異ペプチドが同定された(FDR < 0.01)。後者体細胞変異ペプチドは実際のヒト大腸癌組織が分泌するEVに搭載されうることが分かったので、これらに対して配列が同じで質量が異なる安定同位体標識標準ペプチドを合成し、大腸癌患者血漿からの検出試験に用いた。Parallel Reaction Monitoring法と呼ばれるターゲット高感度質量分析技術を使用し、各種変異ペプチドを最も感度良く検出可能な質量分析パラメータの至適化を行い、検量線の作成、CV(変動係数)< 20%を満たす定量下限値の設定を行った。また、96ウェル自動EV精製システムの構築と評価も実施した。以上の設定を用いて、大腸癌患者経時採取血漿におけるEV中変異タンパク質の絶対定量測定を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り大腸癌組織(正常部、癌部ペア)の全エクソンシークエンス解析、患者ごとの個別化タンパク質配列データベース作成、癌部組織、および組織培養液由来EVのプロテオゲノミクス解析を終え、血漿を用いたバイオマーカー診断能評価試験や分子生物学的機能解析実験に供するターゲットの同定が完了できたため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
大腸癌組織内変異タンパク質については、その変異を持たない大腸癌細胞株における強制発現系、変異を持つ細胞株におけるCRISPR-Cas9ノックアウト系を用いて細胞の増殖や運動能に対する影響を調べる。EV内変異タンパク質については、その輸送標的細胞を線維芽細胞、血管内皮細胞、マクロファージ、T細胞系列、正常大腸上皮細胞に絞り、株化された市販細胞や新鮮組織から単離培養した細胞に変異タンパク質を過剰搭載させたEVを投与して表現型変化とその分子機構を調べる。また、手術時から3ヶ月おきに採取した経時採取血漿検体50例から精製したEVをターゲットLC/MSにより分析し、根治的手術時から再発に至るまで、さらに再発顕在化後の薬物療法経過において同定した変異タンパク質の変動を調査する。以上を通して再発大腸癌に対する新規治療標的分子、再発リスク診断標的分子を同定する。
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