研究実績の概要 |
判断と意志決定は人間の社会生活の根幹であり、その異常は、肥満、薬物依存症、うつ病などの障害として現れる。先行研究により、ヒトの前頭葉内側部の異常がうつ病と関わることが知られている。更に、マカクザルのこの脳部位を磁気刺激すると、うつ様行動が発現する可能性が指摘されており、そのメカニズムを理解するための研究を進めてきた。本研究課題では、特に、うつ病の患者に診られる欲求の異常(食欲・睡眠等)の基盤を理解するための研究として、喉の渇きや空腹などの欲求が行動を変容させる仕組みを調べた。 本年度は4年計画の計画3年目として、これまでの成果を論文として報告するとともに(Tymula et al., 2023 Sci Adv.)、昨年度に行った実験の予備的検討を受け研究が早期に進んだ。具体的な内容は次の通りである。 1) サルとヒトの価値観を行動学として比較する研究を報告した(上記論文) 2) 4年計画の3年目で当初の目的を達成したため、本研究を発展させた新規計画の立案と基盤研究(B)への終了年度前年度申請を行った。 このように、計画2年目に十分な予備的検討を得ること、また、3年目の本年度に十分な成果を得たため、新規課題の計画を立案するに至った。新しい実験技術の導入と合わせて新たな計画を進める事により、新規性の高い独創的な研究成果が得られると予想される。実際、申請した計画が採択されたため、本基盤研究(B)は本年度で終了する事となった。新たな研究を新規の基盤研究(B)として開始する事で、本研究で得られた成果を更に発展させるとともに、新たな研究にも意欲的に挑戦していく。
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