研究課題
本年度も昨年度から継続して、脳画像のデータ収集を行った。対象者は申請者のおこなう脳損傷外来に通院する外傷性脳損傷症例で、研究参加を承諾した症例を対象に、京都大学医学部附属病院に設置された7TMRIの撮像、および滋賀県立総合病院付属研究所に設置されたPET装置を用いてアミロイド、タウPET画像を取得した。また、参加症例について、急性期の意識障害や受傷機転などの臨床情報、および画像取得時の神経心理学的後遺症、神経学的後遺症、精神医学的後遺症、さらにQOLなどの社会生活状況についての情報を取得した。令和4年度は、7TMRIについてはのべ13名(脳損傷症例のみ)、タウPETについてはのべ15名(うち損傷患者9名、健常者6名)の検査を行った。タウPETについては、研究分担者の高畑の協力のもと、タウの蓄積値の散布図を用い、ピーク値を用いる方法を探索的に行ったが、健常者の場合でもきれいにピーク値が得られない被験者が複数存在吸うため、現在別の方法について検討中である。学会発表は第46回日本高次脳機能障害学会学術総会において「びまん性軸索損傷患者における注意機能障害と注意関連ネットワークの安静時機能的結合性との関連」の演題で発表を行った。また、TBSを用いた白質の4つの指標(FA, MD, AD, RD)を用いて、びまん性軸索損傷と健常者の判別が可能かについて、機械学習を応用した研究を行い、学術誌に報告した。また、びまん性軸索損傷における、慢性期の脳幹体積の低下について検討し、急性期の意識障害の指標との関連とともに学術誌に報告した。
3: やや遅れている
令和4年度も、令和3年度に引き続き新型コロナウィルスの蔓延が複数回生じ、行動制限が課される期間が長く生じた。本研究では、アミロイド、タウPETについては滋賀県立総合病院に設置済みのPET装置を用いて行う計画であり、脳損傷患者さんに滋賀県立総合病院まで来ていただく際に、承諾される患者数が制限される、あるいは病院の感染対策上、検査できた時期が限られるなどの問題があり、昨年度よりは改善したものの、MRI,PETともに撮像数として予定に満たない件数になっている。
脳幹の体積低下については、すでに検討を終了し、脳幹全体あるいは中脳については、びまん性軸索損傷群で明かな体積低下を認め、報告した。今年度は、中脳を中心とした脳幹の各神経核をROIとして、Tractographyを行い、脳幹損傷が大脳の機能に与える影響について検討を行う。また、同じく脳幹の体積低下について、その睡眠障害への影響についても検討を行う予定としている。また、今後撮像方法についての見直しも行い、ASL法による撮像で、構造的には問題のない脳領域の機能低下を検出できないかについて、今後予備的な検討を始める予定としている。
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