研究課題
神経変性疾患では、病期の途中からミクログリアが神経炎症を起こして細胞死を誘導していると考えられている。我々は免疫抑制剤FK506がミクログリアを抑制することでプリオン感染マウスの生存期間を延長することを報告した(Nakagaki et al.,Neurotherapeutics. 2020)。FK506のプリオン病ミクログリアに対する作用機序を明らかにすることができれば、治療ターゲットの創出にもつながる。tga20マウス(PrP過剰発現マウス)由来のミクログリア細胞株MG-20にプリオン(Fukuoka-1株)を感染させ、継代を繰り返してもPrPScを産生することを確認した。この細胞にFK506を24時間添加して、mRNAを回収後、qPCR法でサイトカインの量的変化を検証したところ、FK506投与群では炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1β)も抗炎症性サイトカイン(IL-10)も増加するという、一見矛盾したような結果が得られた。MG20は不死化した細胞株であるため、生体内のミクログリアとは異なる反応を示している可能性がある。そこで、プリオン感染マウスから分離したミクログリア(初代培養ミクログリア)を分離して、FK506の治療効果を検証することとした。野生型(ICR)マウスにプリオンを感染させ、発症後に2匹を解剖して脳組織を採取した。磁気ビーズが付着した抗CD11b抗体によってミクログリアを分離、回収した(Magnetic Cell Sorting (MACS)法)。この細胞を培地交換しながら1週間培養した後、抗Iba1抗体を用いて免疫染色すると、非常に強く染色されており、初代培養ミクログリアの分離培養に成功した。
2: おおむね順調に進展している
ミクログリア不死化細胞株を用いて、FK506のプリオン感染ミクログリアにおける影響を確認した。また、マウス由来のミクログリア初代培養細胞の分離、培養方法を確立した。
ミクログリア初代培養細胞にもFK506を添加して、FK506の影響を検証する
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件)
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