研究課題/領域番号 |
21H02828
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武田 朱公 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (50784708)
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研究分担者 |
樂木 宏実 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20252679)
中神 啓徳 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (20325369)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | タウ / 認知症 / アルツハイマー病 / 免疫療法 / バイオマーカー / 伝播 |
研究実績の概要 |
超高齢化社会を迎え認知症の急増に対する対応は喫緊の課題となっている。認知症の原因で最も多いのがアルツハイマー病であるが、根本的な治療法は未だ確立されていない。アルツハイマー病の脳内には神経原線維変化(タウ蛋白の凝集体)と呼ばれる病理所見が出現し、その脳内での広がりが認知症の重症度と相関する。申請者らはこれまでに、タウ病理が脳内を進展する過程において重要な役割を果たす特殊な病的タウを同定し(Takeda et al. Nature Communications 2015、Takeda et al. Annals of Neurology 2016)、その生化学的特徴や臨床的意義について研究を進めてきた(Takeda. Frontiers in Neuroscience 2019、Takeda. Neuroscience Research 2019)。 本課題に先行する研究(科研費若手A:H29~R2年度)では、病的タウが神経細胞間を移動する過程(タウ伝播)に着目し、その分子機構の解明と修飾因子の同定を行ってきた。この中で、病態の進行過程におけるタウの翻訳後修飾の重要性を明らかにし、治療法やバイオマーカー開発の標的となる新規リン酸化部位や生物学的パスウエイを同定した(Takeda et al. American Journal of Pathology 2017、Wesseling, Takeda et al. Cell 2020)。 本課題ではこれらの成果を基にして、タウ翻訳後修飾が病理の進展(タウ伝播)に与える影響をより詳細に解明するとともに、タウ伝播を標的とした免疫療法の開発や、タウ翻訳後修飾に着目した患者層別化バイオマーカー開発のための基盤的研究を行うことを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、タウ翻訳後修飾が病理の進展(タウ伝播)に与える影響を解明し、タウ伝播を標的とした免疫療法の開発や、タウ翻訳後修飾に着目した患者層別化バイオマーカー開発のための基盤的研究を行うことを目的としている。具体的な実施内容として、以下の①~③のテーマについて研究を進めており、それぞれの進捗について記載する。 ① タウ伝播と翻訳後修飾を標的とした免疫療法の最適エピトープの同定と薬効評価:動物モデルやヒト剖検脳組織を用いた免疫染色や生化学解析により、新規リン酸化タウ抗体のcharacterizationを行った。また、標的部位Xについて、ADマウスを用いた薬効試験を実施した。 ② 病態の重症化に伴うタウリン酸化部位のパターン解析とその制御因子の同定:これまでに、アルツハイマー病の危険因子である糖尿病病態を負荷することによってタウ病理を増悪させるマウスモデルを構築しており、この脳抽出液を用いたリン酸化プロテオーム解析とパスウエイ解析(KeyMolnet法)から、病態増悪時に変化するタウリン酸化部位のパターンとその制御因子(生物学的パスウエイ)の候補を既に同定している。PCR法、ELISA・Western blotting等の定量的手法を用いて、既に同定されている候補遺伝子や蛋白群の発現量をマウスモデル(Tau-Tg)およびヒト脳組織を用いて定量測定を行った。 ③タウ伝播の分子メカニズムの解明と修飾因子の探索・同定:病的タウ伝播の詳細なメカニズムを明らかにするため、タウ伝播をin vitroで評価するためのアッセイ系を既に確立している(Microfluidic deviceを利用した2チャンバー神経細胞培養システム)。この系を用いることで、上記の新規リン酸化部位やその制御因子がタウ伝播に与える影響の解析を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の計画に沿って研究を実施する予定である。
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