研究課題/領域番号 |
21H02856
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
本多 真 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, プロジェクトリーダー (50370979)
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研究分担者 |
伊東 若子 公益財団法人神経研究所, 研究部, 研究員 (10775828)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | PSG / MSLT / ADHD / ASD |
研究実績の概要 |
コロナ禍に伴い検査入院停止期間があったが、2021年度に小石川東京病院で睡眠ポリグラフ検査(PSG)―反復睡眠潜時検査(MSLT)を行った107症例のうち100症例から研究同意を取得できた。74例が睡眠障害分類では過眠症で、ナルコレプシータイプ1(NT1)16例, ナルコレプシータイプ2(NT2)15例, 特発性過眠症(IH)亜型26例 IH典型17例だった。25症例で発達障害が確定診断され、注意欠陥多動症(ADHD)14例、自閉スペクトラム症(ASD)4例、ADHD+ASD7例だった。また睡眠ポリグラフ検査結果を標準化(European Data Format化)し、event fileと対応させるための準備作業を64例で完了させた。 (1)夜間睡眠の質的評価を目指した睡眠深度の連続変数表示法(Odds Ratio Product:ORP法)の導入のため、PSG記録の標準化作業を進めた。ORP法の実際の運用にはartifact部分の除去に加えてspindle部の除去が必要であるが、方法の記載がないことが判明、spindle検出アルゴリズム(ばらつきがある)の選択について検討を開始した。 (2)日中覚醒脳波を用いた質的評価法確立のための定量解析:日中の安静覚醒時の脳波記録法を検討し2回目のMSLT昼寝試行前に安静開眼臥位にて5分間測定することでartifactを減らす方法を確定した。2021年度は40例余を収集した。 (3)メラトニン分泌量を概日リズム指標および夜間睡眠指標として用いるため、PSG検査夜の夜間蓄尿を行った。100検体を収集し、ELISAの方法を確定して80例について尿中6-sulfatoxymelatonin(メラトニンの主要代謝産物)測定を行った。夜間睡眠障害との関連検討および発達障害確定診断例との関連について予備的解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は症例集積に伴う検体やデータの処理法の検討などの研究基盤整備が主な目的であり、コロナ禍でも100例の新規協力(78例の採血協力例)を得られたことから、研究全体としてはほぼ順調とした。ただ睡眠検査により睡眠障害の確定診断はほぼ全例で可能となるのに対して[中枢性過眠症の確定診断は74例でナルコレプシータイプ1が16例、タイプ2が15例、特発性過眠症が43例だった]、発達障害の確定診断は25例と予想通り簡単ではなく[ADHD14例、ASD4例、ADHD+ASD7例]、研究期間を通じて典型例の集積を図る必要が再確認された。また血液や尿検体の収集・分離・保存・解析は方法論が確立されているが、電気生理学学的指標については(多数データを扱う際の)artifact除去やspindle判定など課題が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目も睡眠障害診断・発達障害確定診断例の症例蓄積(検体・臨床情報・検査所見)を行うことが基本となる。解析のため睡眠ポリグラフ検査の標準化作業も継続し、電気生理学的解析の方法論を検討、最適な評価法を確定する。 1. 夜間睡眠の質的評価:100例以上のPSG結果のedf化を行う。spindle検出アルゴリズムの検討のため、睡眠学会専門技師にmanual判定を依頼しその信頼性・妥当性評価を行って最適なアルゴリズムを選択する。その上でspindle部を除外した脳波定量解析を行って、Odds Ratio Product:ORP法に用いる日本人標準参照値を確立する。睡眠深度の連続表示を行い、睡眠障害診断分類、発達障害診断分類との関連について予備的検討を行う。 2. MSLT検査中に継続記録されている日中覚醒時PSG記録について症例数を蓄積しPSGと同様にファイルのedf化を進める。目視でのartifact処理の上で脳波定量解析を行い、FDAが提唱するADHDの判別指標であるtheta beta ratioが、本当にADHD特異的変化なのか検討を行う。 3. PSG検査夜の夜間蓄尿も継続して行い、追加して尿中6-sulfatoxymelatonin(メラトニンの主要代謝産物)測定を行う。症例数を増やして夜間睡眠障害の診断および発達障害確定診断例と関連について統計解析を行う。対象症例数が増えれば交絡因子を除外した上で、発達障害特異的な変化を探索・同定する。 4. PSG記録のedf化作業完了を待ち、自律神経指標解析の専門家に心拍変動のartficant除去のための助言をいただいて、時系列データの適切な解析法を確定する。
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