研究課題
近年欧米を中心に普及の進む磁場共鳴(MR)画像誘導X線治療では,従来技術では難しかった照射中の腫瘍や周辺臓器の位置確認が,組織分解能のよいMR画像により可能になり,腫瘍に集中した線量投与が可能になると期待されている.X線よりも線量集中性の高い陽子線においても,更なる副作用の低減を目指して「MR画像誘導陽子線装置」の研究開発が進められており,近い将来に実用化が期待されている.一方で,現在の陽子線治療には「陽子線飛程の不確かさ」の問題があり,本来陽子線治療の長所であるはずの線量集中を阻んでいるが,この不確かさはMR磁場下では深刻化する.なぜなら,磁場の無い場合には陽子線は直進するため,飛程の不確かさは陽子線の進行方向(1方向)のみであるが,MR画像誘導においては,磁場によって陽子線の軌道が曲げられるため,飛程の不確かさが3次元化するためである.この問題に対して,本研究は不確かさをシミュレーションによって定量化し,イオン音響技術を使ったフィードバック機構の初期検討を行う.令和4年度は,より現実的なMR画像誘導陽子線治療装置について検討を行い,前立腺治療を想定して磁場が線量分布にどのように影響するのかを調査した.この結果は,米国医学物理学会で発表した(Ueda et al., AAPM (2022)).また,MR磁場下の陽子線照射と音響波伝搬シミュレーションを統合したシミュレーションシステムの構築を開始した.飛程検出に用いる検出器の体表への配置を想定し,センサーヘッド部分のプロトタイプを3Dプリンターで試作し,加速器実験にてセンサーヘッド形状依存性についてのデータを取得した.
3: やや遅れている
当初の予定では今年度,MR磁場下の陽子線音響波伝搬シミュレーションを完了させる予定であったが,装置検討に時間を要したため遅れが出ている.
次年度以降はMR磁場下の陽子線音響波伝搬シミュレーション構築を完了させ,磁場の有無による音響信号の変化について明らかにしていく.また,センサーヘッド部分の形状についての実験結果を解析し,体表設置に最適なサイズについて検討を続ける.
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Med. Phys.
巻: - ページ: 1-12
10.1002/mp.16189